第376話 山脈の上部へ2

 森を抜けたところで上位ハイオークの襲撃を受けたその夜は、特に何事もなく朝を迎えることができた。

 上位ハイオークの肉を使った朝食の後、さらに山脈の上に向けて登って行く。


 出発してそれほど経たないあたりで10人ほどの冒険者集団を見かける。

「今度は魔術師団員の皆様ですか……」

 あまり良い感情ではない感じの呟き声が聞こえる。

「ということは、騎士団員たちとも会ったのですか?」

 ニキアスがいつも以上に丁寧に確認する。

「あぁ昨夕、100人ぐらいがここを通って行ったさ。おかげで俺たちの狩場も荒らされて。こっちが戦闘中だったのもお構いなしさ。そのくせ倒した魔物は全て回収して行った」

「それは……」

「あんな力押しでどこまで行けることやら。あんたらはまだ話が通じるようだから教えてやるが、もうちょっと進めば地龍(ドレイク)の群れが待ち受けている。あいつらは足が遅いから、無理に戦わなくても馬の脚ならば通り抜ける方法もあるぞ」

「貴重な情報、ありがとうございます」

 ニキアスは多めに情報料を渡すことでそれ以上の情報を期待したが、残念ながらそこまでであった。


「やはり騎士団が倒して行ったおかげで魔物との遭遇が少なかったようだな」

「半日や1日だけの差に追いついているということは、それだけ彼らは戦闘時間を要したわけですしね」

 フェルバーとニキアスは騎士団による冒険者への対応には呆れつつ、その戦闘力を改めて実感するのであった。


 そのまま峠のところまで登るまでの間にも、少数の冒険者たちを何度か遠目に見かけるが、戦闘中であったこともあり助けが不要との返事を貰う以外には接触を行っていない。

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