第494話 賭場への踏み込み

 先ほどは“闇ギルド”の麻薬拠点の肉屋、今度は違法賭博拠点の倉庫である。

 単なる賭博程度であれば衛兵が踏み込んで捕縛する理由にはならないが、ここでも麻薬を取り扱っている上に、麻薬漬けにした女性を景品にしているとの情報であった。

「居たわ!きっと彼女たちがそうね」

 ここでも、建物上部の窓から送り込んだ使い魔シルヴィスの視点で、保護対象の存在と場所を確認する。


 肉屋にも衛兵の何人かは残して来ているが、こちらは魔術師団員の15人も居るので、見た目は大きな倉庫であるが、逃げ場は無いように取り囲める。

 衛兵は顔が知られている可能性があるため、この街に不慣れな冒険者として、魔術師団員のうち数人がすでに中で潜伏している。


「いくぞ!」

 おそらくは元々普通の倉庫だったと思われる建物のため、搬出入の大きな扉が正面に、通常の出入口と思われるものが他にいくつかある。それぞれに対して魔術師団員とドロテアによる火魔法が同時に発動される。

「何だ!?」

「襲撃だ!」

 中から声が聞こえてくるが、飛び出してくる者は居ない。


 正面の大きな扉を≪豪炎≫≪火槍≫などの強力な魔法で焼き落としたところで、衛兵たちが盾と槍を構えながら突入していく。

「東部旅団のマンファン分隊である。大人しくしろ!抵抗するものにはそれ相応の対処をする!」

 先の肉屋と同じ内容をマンファンが大声で叫ぶが、今度は適当な発言で寄ってくる者はいない。

 どちらかというと、賭博の客で後ろめたい自覚がある者が両手をあげてしゃがみ込んでいるのが点在している。見覚えのある魔術師団員も同様のそぶりをして紛れている。

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