第502話 悪魔魔法

「で、これからも殺すとしたら魔物か、人間でも悪人だけのつもりだから、自分で使い道のない魂をベリスにあげても良いけれど、ベリスの力が増すことのメリットは?」

 悪魔ベリスの力が増すことに対するユリアンネやシミリートのメリットを問われたベリス。封印され錆びついて使い手もいない期間が長かったからか強く説得してくる。


『我の力が増すと、悪魔魔法を使えるようになるぞ』

『でも、すでに魔導書で≪睡眠≫≪毒≫≪病≫は学んでいるわよ』

『それは厳密には悪魔魔術であり狭義の悪魔魔法ではないだろう?』

『え?』

『広い意味では悪魔魔術も悪魔魔法と呼ばれるが、効果の発動の仕組みが全く違う。お前の≪睡眠≫などは、あくまでもお前の魔力で発動させているだろう?本来の悪魔魔法は異界の存在である悪魔に魔力を供給し、悪魔が事象を引き起こすものだ。

 火をおこす魔法を自力で発動する魔術、火の精霊に魔力を供給して火をおこさせる精霊魔法と言えばわかりやすいか』

『なるほど。で、狭義の悪魔魔法が使えるようになると何が良いの?』

『魔導書で魔術を覚えなくとも、我を召喚すれば様々な魔法を発動させることができるぞ』

『でも、悪魔魔法だけじゃ大して役に立たないじゃない?』

『火風水土光闇そして無の各属性の魔法、正確には魔術も発動できるわ。悪魔だぞ。精霊は自属性だけだが、悪魔や天使にとっては各属性魔法程度、簡単なことだ。ただし力を取り戻した場合には、だがな』


「なんか色々と役立つかもしれないけれど、悪魔が力をつけて自由になっても困るわよね」

「確かに。奴隷契約みたいに制約を設けたいよな」

『普通は異界の存在が権能を発揮するためには、魔法の使用者と事前に契約を交わす必要がある。それでときに応じて召喚されたり憑依したり権能のみ発動したりする』

「ま、しばらく様子を見て考えるわ」



 しばらくは≪吸血≫ダガーを使わずにダンジョン攻略などを進めていたユリアンネたち。

「で、どうするか決めたの?」

「それが……私が持っても投擲するわけでもないし……」

「じゃあ、しばらくは俺が預かったままで投擲に使うことにするよ。壊れないで自動修復する理由も分かったから安心して使えるし」

「シミ、じゃあお願いね。ベリスは色々と物知りみたいだから、ときどきだけ返してね」

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