第314話 フィノイス周辺の村防衛3

 治療可能な村人を治した後、敵兵でも傷が重くて命に関わりそうな者にだけ治療を施す。


「なぜこんな奴らを生かしておくのですか!」

 略奪にあった村人にするとその発言も仕方ないと思いつつ、ユリアンネが無駄な殺害を嫌がることを分かっているシミリートは、その言葉に従わない。

「皆様のお気持ちも非常に良くわかります。ただ、モンタール王国の仲間が逆に捕虜になっている場合に交換に使うこともできますし、情報を入手することで味方のこれ以上の被害を抑える可能性もあります。知人の息子が捕まっているかもしれないと想像してください。もしくは隣の村が襲われることを食い止められるかも、と考えてください」

「う……」

 その理屈に心から納得したわけでは無く、怪我人の治療に来た上に食料なども配布してくれている集団のリーダーに逆らうことは不利益しかないと我慢しているのかもしれない。


 武装解除して後ろ手に縛り猿ぐつわもさせた状態の敵兵8人を、村から譲って貰った荷馬車に乗せる。荷馬車を引く馬は、敵が騎乗していた3頭の馬であり、取り上げた装備類はシミリートが預かっているユリアンネの魔法の袋に収納している。



 本当はこのまま次の村に向かいたいところだが、この荷馬車のまま移動すると足手まといであり、もし敵襲にあうとむざむざ捕虜を敵軍に帰らせることになりかねない。

 仕方ないのでステフェンに荷馬車を連れて戻りかけていると、途中で味方の集団に遭遇したので、荷馬車を預けて当初目的だった村の1つにとって返す。


 本日2つ目の村では敵兵もいなく、敵襲もなく無事に治療を終えることができ、再び安全地帯まで離れて野営を行う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る