第315話 戦争奴隷

 翌日もフィノイスの街に近い村々の治療をした後は、いったんステフェンの街に戻る。

 今までで敵兵との戦闘があったのは1つの村だけであったが、他の場所でも戦闘の可能性があるための緊張をいつまでも続けられないからである。


「シミリートさん、ユリアンネさん、皆さん良くやってくれましたね」

 宿舎として借り上げられていた宿屋の食堂で、食事も終わりゆっくりしているところにやって来たのは、オテロ・フェルバー中尉。魔術師団の小隊長でもある準男爵である。

「臨時とはいえ、私の小隊メンバが活躍していると評価されているのです」

「村の防衛強化、治療行為だけでなく、先日とらえてくれた捕虜についても、なんですよ。所詮は分隊長、伍長程度の相手であり、詳しい情報はありませんでしたが、真モシノム大公国と示し合わせた侵攻であったことは確認できました。示し合わせだったので、ビザリア神聖王国の兵士たちは楽勝で略奪し放題と思っていたようです」

 一緒にやって来ていた、小隊の副官であるニキアスが詳細を話してくれる。


「もしかして拷問をしたのですか?」

「シミ!」

「いえ、戦争奴隷の処理をして情報収集しただけですよ」

「戦争奴隷?」

「あ、縁がありませんでした?借金奴隷と犯罪奴隷の中間レベルの制約ですが、少なくとも主人に設定した人を裏切ったりできませんし、身代金を払えない限りは奴隷のままです」

「……」

「万が一に皆さんが捕虜になった場合には、今までの成果の報奨金を使ってすぐに身代金をお支払いしますのでご心配なく」

「はぁ……」


「ニキアス、本題を」

「はい。では皆さん、もう少しお時間を頂けますか」

 フェルバーの部屋に割り当てられた広めの部屋に移動するよう促される。

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