第350話 王都との別れ2
「あなた方がフィノイス周辺で活躍された……」
「いえ、魔術師団、騎士団、現地の守備隊の皆様のおかげですよ」
「それに食事にも期待できるとか」
「それはお任せください。別途のお代は頂きますが」
護衛対象という扱いである魔術師団員は、昇格して大尉になり小隊長から中隊長になったオテロ・フェルバーを含めて15人であった。
同じく昇格して少尉になった副官ニキアス以下7人は北方でも一緒であった者たち。そして新たにフェルバーの部下になった中で騎乗できる者の7人が追加されている。
騎士団員には貴族風を吹かすものもおり、一部とは折り合い面で問題があった。しかし、今回に追加された魔術師団員はフェルバーとニキアスたちの事前情報、食事面などを踏まえてなのか初対面のときから食ってかかる者は居なかったので、シミリートたちもホッとしている。
「ところで、彼女が“薬姫”なのでしょうか?」
「はい!?」
「え?治療にも活躍された魔法使いの女性ですよね?」
「はぁ!?」
ニキアスが、フィノイスで活躍した臨時部隊の魔法使いの女性についたあだ名、二つ名であることを教えてくれる。薬の提供者はパーティー全体であったが、神殿での治療の際にずっといた女性としてユリアンネが対象に。また“薬神”という名前も候補に上がったが恐れ多すぎて“薬姫”に落ち着いているらしい。
「では、宿屋以外での野営のときの食事はお願いしますね」
動揺しているユリアンネを放置して、ニキアスが副官らしく音頭を取って22人の集団の出発を促す。馬車があるわけでもないため、護衛の中心は魔術師団員たち15騎である。ただ、護衛の7人より多いので、集団の前にシミリート、ユリアンネ、ドロテア、集団の後ろにジーモント、ヨルク、カミラ、ゾフィとする。
治安も良い主街道で、22人の騎馬集団を狙う魔物も盗賊も居ないと思われるが、念のために周囲を確認しながら進む。
王都を出てすぐの昼食。草原の中でジーモントが調理した温かいスープなどを食べた新規メンバがその味に満足したようであり、これからの長旅も何とかやっていけそうな気配である。ユリアンネの動揺はしばらく続いたままではあったが。
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