第351話 東進
料理に満足して貰えたことから、街道から少し離れて角兎(ホーンラビット)を狩って食材にする許可も容易に貰うことができた。もうストックしていたハイオークの肉などは無くなっているため、それら現地調達した肉、王都で買い込んで来た食材、途中の街で追加調達する野菜などの食材を利用しながら東に向かう。
通常の武器の訓練ぐらいならば朝や夜にできるが、ユリアンネがドロテアに魔法の指導をするのは他の魔術師団員の目があるため、宿屋に泊まったときに他者に見られない範囲のみになってしまった。ドロテアが初級水属性の≪水生成≫≪水球≫も習得して伸び盛りなのに仕方ない。ポーションの調合も“薬姫”を裏付けてしまうので、宿屋でのみ行う。
増員になった団員は“薬姫”と話をしたがったようだが、以前から一緒していた団員が、ユリアンネが格好の通り人との接触を避けていることを伝えてくれていたようで、困ったことにはなっていない。
「あのキッツシュ湖の景色を見るのは諦めないとダメっぽいね」
「領都バーアンには夜に到着しそうだし、難しそうだな」
王都に来る際に見た巨大な湖の風景を思い出すが、護衛の立場でありそこまでの自由時間が無さそうである。
「でも、テアは初めてなんだから」
結局はカミラが主導し、皆で早起きをして日がのぼる前のうっすら明るい時間帯ではあるが、いかに広い湖であるかを確認して宿に戻る。
「皆様、私のために早起きさせてしまい申し訳ありません」
「テア、遠慮しなくて良いのよ。私たちは仲間なんだから。それにそういうときは?」
「あ、はい。ありがとうございます!」
「そう、謝罪じゃなくて感謝にしようね。お互いに」
「この後の川にも驚くことがあるんだよ」
こちらもドロテアが初めてなので、大きな川を渡るときに干し肉を投げ込む。飛魚みたいな翼になるヒレを持ったピラニアのような魚が、何匹も水面から飛び出して奪い合う様子を見ると、ドロテアは言葉を失う。
自分たちも一度しか経験して居ないのだが、なんとなく詳しい先輩であるという態度をドロテアに対して振る舞えることを楽しんでいる仲間たち。一方のドロテアも、奴隷扱いされずに普通にパーティーの新規メンバとして構ってくれる他メンバに改めて感謝する。
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