第366話 代官夫人マルゴット2

 ユリアンネの治療行為によりマルゴットが悲鳴をあげる。

「貴様!妻に何をした!」

 代官のアナスガーがユリアンネの横に駆け寄ろうとするのより先に、マルゴットがユリアンネの反対側にベッドから転がり落ちる。

「貴様!」

 アナスガーがユリアンネの杖を奪い取ろうと腕を伸ばしたところで、マルゴットが立ちあがる。

「見すぼらしい姿から油断してしまったわ。初級程度の回復魔法ならば耐え切ってしまうつもりだったのに」

 マルゴット?だったはずの女性の背中には蝙蝠のような大きな翼が生えており空中に浮かび上がる。


「お、お前は?マルゴットじゃないな!誰だ!?」

「あらあなた、つれないわね。妻の私をお忘れ?なぁーんてね。マルゴットなんてもう居ないわよ」

 いつの間にか顔もマルゴットとは別人になっている。

「シミ!ジモ!ヨルク!」

 カミラが廊下の仲間達に声をかけながら、代官アナスガーの前に立ち、魔法の収納袋から魔剣のショートソードを取り出す。


「逃がさないわよ!」

 窓に移動しかけたマルゴット?に対し宣言しながら、窓の前に≪氷壁≫を発動しつつ、その魔物に≪氷槍≫を発動するユリアンネ。


 女中達の悲鳴と合わせて、部屋の扉を開けて雪崩れ込むシミリート達と、ニキアスや代官館の職員達。

「あら、やるわね。でも無駄よ」

 ≪氷壁≫に手をかざして消滅させたのを見たユリアンネは、再度≪氷壁≫を発動するだけでなく≪石壁≫を含めて多重に壁を作り出す。

「しぶといわね!」

「お前は誰だ!」

 再びアナスガーが叫ぶ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る