第367話 代官夫人マルゴット3

「そうね、しばらく夫と呼んでいたあなたの問いならば答えようかしら」

 マルゴット?であった魔物が、ユリアンネが作った壁を順番に消滅させていきながら発言している。

「私は偉大なる始祖ニキシオン様に仕えるモラク。マルゴットのふりも楽しかったけれど、これでさようならね」

 ユリアンネとドロテアの攻撃魔法を回避しているだけでなく、自身も≪氷槍≫をいくつか室内に乱発することで、女中達の悲鳴がさらに上がる。


「待て!」

 シミリートがユリアンネから預かっている≪麻痺≫と≪吸血≫のダガーを投げても回避されたが、その隙に≪氷壁≫などの壁を増やすユリアンネ。

 アナスガーの前に立って攻撃を防いでいたジーモントとカミラ達も、部屋の入り口の方にアナスガーを連れて避難する。ゾフィは女中達の手を引っ張り、同様に避難誘導する。

「行くわよ」

 ユリアンネとドロテアが屋内だからと遠慮していた火属性の≪火炎≫≪火槍≫を発動するのと合わせて、ニキアスも≪火槍≫で攻撃を開始する。


「あらあら、この館が燃えても良いのかしら?」

 モラクはまだ笑う余裕があるとわざと会話を続けているのか、自身も目の前に≪氷壁≫を発動させながら≪氷槍≫をいくつも発動させる。


「そろそろ降参したらどうかしら?」

 カミラが避難作業を行いながら、部屋の入口から挑発する。

「始祖ってことは、吸血鬼ですか。でも貴方は使い捨てにされる下級吸血鬼、レッサーヴァンパイアってところですよね?」

 丁寧な口調は変わらないが、ニキアスが自身の知識も使いながら挑発を続ける。

「レッサーだから何よ!」

 意外とその挑発は効いたようで、モラクの攻撃対象がニキアスに集中する。

「ならば、所詮はBランク魔物ですね。皆さんの実力ならば恐れるに足りません。逃がさないように気をつけてください!」

「何ですって!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る