第412話 モンヴァルト山脈の西

 斜面を登る中では、先行する冒険者たちの間引きだけでは間に合わないほどの上位ハイオークと遭遇する。

「やはり前回は騎士団100騎による間引きの後だったということか。あのとき我々は楽をして進んでいたのか」

「ま、冒険者たちの反感も買っていた彼らと比べて、私たちは冒険者たちと共闘できていますから、こちらの方が正解ですよ。時間はかかるかもしれませんが、確実に進んでいますし」

 中隊長フェルバーと副官ニキアスが、戦況を見ながら話している。


 ユリアンネたちも護衛であるので、他の冒険者たちや魔術師団員と共にハイオークファイター、ハイオークアーチャー、そしてハイオークメイジと戦っている。

 冒険者たちには魔法使いが少ないため、主に彼らが前線に立って近接武器を振るっている合間に魔術師団員が攻撃魔法で遠隔攻撃する役割分担が自然とできている。

 金級冒険者の槍使い“流星”エックハルトは、その相棒の精霊魔法使いのシグランと2人、それぞれ戦馬(バトルホース)の脚力を活かして後方撹乱を行っており、アーチャーやメイジを少しずつ減らしている。


「流石はエックハルトさん。あの隕鉄だという槍はすごいな」

「シミ、人のことを見とれてばかりいないで」

「分かっているよ。でもユリもシグランさんの精霊魔法が気になるだろう?あの風魔法での切り裂きなんか」

「え、まぁね。それに魔術師団員の皆さんも、落ち着いて戦えていると私が習得していないような魔法を使われているのに気づくわ。ほらあの人、多分≪豪炎≫っていう上級火魔法よ」

「お二人とも……」

 “選ばれた盟友”の中でも戦馬に乗るユリアンネ、シミリートとドロテアの3人はエックハルトたちのように遊軍の動きをしていて、残る4人は他の冒険者たちに混ざって主にハイオークファイターと戦っている。

 ドロテアにすると自身はまだ中級魔法の≪火炎≫までしか使えなくて、シミリートたちについて行くのに必死なのに周りを見る余裕がある二人には呆れるばかりである。

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