第327話 ドロテアの魔法練習

「それで、テアも魔導書は読めた?」

「はい、お借りしたものは一通り」

「まずテアが使える魔法を見せて貰える?」

 ユリアンネはドロテアと一緒に街の外に来ている。自称護衛のシミリートもついて来ている。


 ドロテアは火属性しか使えないと宣言していたように≪火生成≫≪火球≫≪火炎≫のみを発動させた。詠唱も行った上で、赤色の魔法陣を出現させていた。また、前世知識のイメージで強化できているユリアンネに比べると威力も低い感じである。


「はい、ありがとう。もう少し魔力はあるわよね。各属性の初級魔法を、これらの触媒を使って試してみて」

 火以外の、風・水・土・光・闇それぞれの属性の触媒を用意した上に、それぞれの魔導書を開きながら練習をさせてみる。もちろん最初であるので魔導書にある魔術語の詠唱はさせる。


「すみません。やはり全然できません……」

「そうね。では私がやるのを見ておいてね」

 ユリアンネが見本として、触媒は使用しないまでも、詠唱を行い魔法陣を出現させて実演してみせる。

「魔力回復ポーションも飲んで、もう一度やってみて。私がやったものをイメージしながらね」


 しかし成功する気配が無いままであった。

「じゃあ今度はこれを使ってみて」

 手元にあったスクロールのうち、火属性以外の≪治癒≫をドロテアに渡す。自身に小さな傷をつけた上でスクロールを発動させる。また、再び傷をつけたところにユリアンネが≪治癒≫を行う。

「今度はこの魔法を試してみてね」

 スクロールで体験したことが良かったのか、少しそれっぽい感じになる。

「ユリさん!兆しが!」

「よく頑張ったわね。そうよ、できないと思い込まなければ良かったのよ。もっと練習してみましょう。自分を治せたら次は他人ね。シミも手伝ってね」

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