第405話 不死者ダンジョン最深部3

 色々と挑発が効いたようで、口調は丁寧なままであるが吸血鬼(ヴァンパイア)の発動する≪氷槍≫の数が増えつつも、狙いが雑になったようである。

「へぇ、名無しのヴァンパイア風情が頑張っているじゃないか」

 金細工の指輪が始祖ヴァンパイアのニキシオンに関係するということの確認もとれ、シミリートがさらに追い打ちをかける。

「また自らが名乗りのもしないのに、名を問うとはさすがは下等生物ですね。ただ、我にはニキシオン様に頂戴したダニロという名があります。自分を殺す者の名前として人生最後に覚えておきなさい!」

「すぐに殺す魔物の名前など誰が覚えるか!」


 そのダニロは空を飛びながら場所を変えて攻撃をして来るため、最初の≪石壁≫のみでは盾にならず、その反対側にもユリアンネが≪石壁≫を発動していく。

 ダニロ、ユリアンネ、ドロテアが魔法を発動し、ゾフィが矢を射る以外は効果的な攻撃手段がないため、どうしてもこう着状態になってしまう。

「ははは、7人も居て手も足も出ないようですね」

「それはどうかな」

 ユリアンネが、上空に飛ばしておいた使い魔シルヴィスに突撃をさせる。

「グヴォ!」

「は、下品な悲鳴だな」

 シミリートが挑発の言葉を発するぐらい、ダニロも驚いたようである。ユリアンネが前世記憶で吸血鬼は銀に弱い、胸に杭を打ち込んで倒すイメージがあったので、魔銀(ミスリル)であるシルヴィスに頭部から彼の心臓部に突っ込ませたのである。手のひらサイズのワイバーン形状ではあるが、固い彼の頭部は狙い通りダニロにダメージを与えたようである。


「ひ、卑怯な……」

 ダニロは人型を保てないのか逃げるためか蝙蝠に変身するが、胸部にシルヴィスが刺さったままである。その動きで隙ができたところへユリアンネが、自身の最強の攻撃魔法≪炎槍≫を発動させる。

 まともに王級魔法を受けたダニロだが、まだ息はあるようである。ふらふらと落ちてくる大きな蝙蝠にシミリートも≪刺突≫のショートスピアを突き刺す。

「あなたたち、許しませんよ。覚えておきなさい……」

 ヨレヨレとそのまま倒れるかと思えば霧になってしまう。

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