第551話 トリアンの住民慰撫2
「で、シミはいつまでここにいるのよ」
「どういうことだよ」
「衛兵団に戻らなくて良いの?戦争は終わった、と慰撫してまわる領軍の仲間に戻らなくて良いの?」
独立騒動の最初の頃は住民から無茶な徴集などもあり、特に独立派の男爵と衛兵団の衝突などもあったが、今回のルオルゾン領軍との交戦はあくまでも西の草原と小山の領主館の2箇所だけであり、街中に被害はなかった。
それもあり、「独立騒動は終わった。モンタール王国のストローデ領として今後も暮らしていく」という旨を領軍が触れまわっているのである。
「マンファン分隊長とセレスラン班長からも打診は受けているが、今のタイミングで戻るべきか悩んでいて」
「それは?」
「みんなもこのままトリアンで一生を過ごすのか?」
「う。それは。前は逃げるようにこのトリアンを去ったけれど、やっぱり王都にも良いところはいっぱい有ったわよね」
「でも、ここで実家を継ぐつもりだし」
「カミラやジモはそうだよな」
「じゃあヨルクやゾフィは出ていくのか?」
「ユリも?あ、ごめん」
カミラは謝ってくる。確かにユリアンネも、このトリアンでオトマンの書店を継ぐ予定であったが、そのオトマンは亡くなり“オトマン書肆(しょし)”も無くなってしまっていた。
「あの無茶な徴集に対する賠償はされるらしいね」
皆がユリアンネを気遣ってくれるので、少し違う方向の話を返す。
「でも私はそのお金を孤児院にまわして貰うようにお願いしたわ。もう生きていけるだけのお金は稼げるようになったしね」
ユリアンネの悲しそうな笑いを見て、カミラが抱きつく。
「今すぐに決めなくて良いわよね。もう少しこのままで」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます