第602話 港街シオサキでの宿泊

「まさか、ポーションがあんなに高値で売れるとはね」

「流通が滞っていたのもあるのと、この国の薬は即効性のあるものが珍しいからって言っていたわよね。確かに前に教わった時も塗り薬や丸薬とかじんわり効果がある物だったわよね」

「そうなんですよ。だからポーションが枯渇して高騰しているのかと思います」

 雑貨屋らしきものを見つけた際にユリアンネが調合したポーションの買い取りを頼んだ結果である。


 王都シャトニーでグリーンリーフに教わった丸薬の一種である丹薬なども陳列されていたが、その辺りはフェザーの実家に向かったときに入手できると思われるので、その他の商品を見てみる。

 筆と墨と硯らしきものを発見し、つい購入してしまう。“極東の輪舞曲(ロンド)”はこれらをどこかで入手して、呪符を作成したのだろうか。


「そういえば、呪符は売っていないのかしら」

「お嬢さん達、その言葉を気軽に出してはダメだよ。門外不出と考えている人達ばかりなんだから」

 フェザーに話しかけたユリアンネの言葉は分からないはずなのに、“呪符”の単語だけは分かったようで、フェザーに対して注意してくる店主。

 その言葉をフェザーに通訳されたユリアンネは驚きながらも頭を下げて、感謝をこの国の言葉で伝える。

「アリガトウ」

 ムスッとしていた店主がにっこり笑い返してくれたのが印象的である。



 事前に約束していた宿屋にて男性陣と合流すると、ヨルクが興奮している。

「ユリ、これを見てくれよ。きっと焼き入れの技術を使っているんだろう」

 見せて来たのはダガーぐらいの刃渡りの短刀であった。

 前世記憶のイメージでは“ドス”とも呼ばれる、鍔(つば)のない短刀である。

「ヨルクが興奮して大変で、さ。本当はもっと長いのもあったんだけど高くて。それでも、この長さでも良さは分かるって買って来たんだよ」

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