第65話 呪符2
そもそも魔法の巻物(スクロール)は、使用者が未習得の魔法でも魔力を込めたら発動できる使い捨ての魔道具である。砕いた魔石を混ぜたインクで魔法陣を羊皮紙に書く物であり、正確に記載できないと発動できないので、その魔法を習得済みで魔法陣も使いこなせる者が作成しないとダメらしい。
これがユリアンネや羊皮紙も取り扱う皮革屋の次女であるゾフィの認識である。ユリアンネは魔法関係の書物も“オトマン書肆(しょし)”で読んでいるため、それなりに知識はあるし、ガラクタ市などでもときどき見かけているので、自分でも製作してみたいと思っていたぐらいである。
しかし、魔法のスクロールは手元で巻物を開いて魔力を込めて手に持ったスクロールの魔法陣を発動させるため、“極東の輪舞曲”が使用しているように、その札のようなものを敵に投げつけたり、以前のように紐に吊るしておいて離れているのに発動したりするというのは認識が異なる。
また遠目に見える、書かれた紋様は通常に見かける魔法陣、主に丸などの図形と魔術語で描かれるものとは異なっているようである。
彼らの会話から漏れ聞こえてくる単語から、おそらく「ジュフ」と呼んでいるのだけは分かったが、あまり他人の技術を詮索しないのも冒険者のマナーであり、自分たちの狩りに専念する。
ただ、まだまだ知らないことが多い世界であると思わされるユリアンネであった。
後にガラクタ市で安く売られているのを見かけたユリアンネ。
「あ、それ?何かわからないけれど、ダンジョンで拾ったんだ。まぁ羊皮紙に何か書いているし、人工物だから売れるかなと。安くしておくよ」
とは言う売主であったが、銀貨1枚という高いのか安いのかわからない代金を払う。興味がある人には安いのであろうか。
そして手にとり硬い羊皮紙に書かれているものをじっくり見てみると、そこに書かれているのはインクとペンではありえない、文字の最後にはカスレがある墨と筆での運筆のようであった。しかも前世記憶での道教や陰陽道の呪符のようであった。
ガラスのことといい、やはり自分以外の転生者が居てあちらの知識を広めている人がいるのだと思われる。しかもクラン名が“極東の輪舞曲”。東の方に居るのであろうか。
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