第427話 山脈での夜襲、再び3

 飛龍(ワイバーン)や吸血鬼(ヴァンパイア)の襲撃も片付いた後、流石に怪我人も出たので治療を行ってから、当番を残して眠りにつく冒険者や魔術師団員たち。

 残念ながら吸血鬼騒動について状況を理解しているシミリートは、ニキアスによる事情聴取に捕まっている。睡眠による魔力回復を優先させるべく、ユリアンネは釈放されている。

「ということは、レイスの襲撃ももう終わりということですか。良かったです」

「はい。ただ、始祖吸血鬼というニキシオンのことはそれ以上の情報がないままですし、この山脈の魔物たちの発生を抑える方法は分からないままですが」

「それは仕方ないですね。我々の一番の目的は、まず山脈を越えてストローデ領に入ることですから」

「そうですね」

「あ、それと。そのヴァンパイアの魔石はエックハルトさんにあげてくださいね」

「あ、はい……」

「大丈夫ですよ。シミリートさんたちにはそれだけの報酬を、山脈を越えた時にちゃんとお支払いしますから」

「は、ありがとうございます。それでしたら、もし良ければ、なのですが……」

「……なるほど。ではメイユの街について落ち着いたときに」

「ありがとうございます!」

「ユリアンネさんも良い仲間が居て羨ましいですね。これが冒険者仲間と言う物なのですかね……」


 夜が明け、道中で確保した上位ハイオークの肉を使った朝食が振る舞われる。

「昨夜は流石に死ぬかと思ったよ」

「本当、流石は“流星”エックハルトさんたちだったな」

「いやいや、あの魔術師団員の護衛の“選ばれた盟友”の連中もなかなかだったぞ。“薬姫”だけでなく槍使いの男も含めてそれぞれ頑張っていたぞ」

「そうなのか。“薬姫”の顔が見えないかな、ばかり気にしていたから気づいていなかったわ」

 特に食事の提供をしているジーモントはその一人であることに気づかれにくいのか、そのような冒険者たちの声が漏れ聞こえてくると気恥ずかしい思いをしている。

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