転生薬師は迷宮都市育ち

かず@神戸トア

元薬学部受験生

第1話 プロローグ

 森の中にある岩場付近を歩いている6人。そのうちの1人が小声で注意喚起をする。

「あの岩陰にゴブリン!」

「ヨシ!任せておけ!」

 使い込まれた感じのある茶色い革鎧(レザーアーマー)を着込み、左腰の鞘から右手で片手剣(ショートソード)を抜き、左手に小さな丸盾(バックラー)を構えた男が駆け出す。

「おい!ちょっと待てよ」

 敵を発見して声をかけた同じく茶色革鎧を着込んだ男が短弓(ショートボウ)に矢を番(つが)えながら追いかける。

「仕方ないですね……」

 頭まで隠れる濃緑色のローブを着た男がため息をつきながら、親指ほどの大きさの水晶らしき物が片端に埋め込まれた、身長ほどの長さの杖(スタッフ)を右手で突き出し、ぶつぶつとつぶやき出す。そのつぶやきに合わせて、突き出されたスタッフ先端の水晶らしき物のさらなる先の空間に、赤色に光る円や三角などを組み合わせた切り絵のような物、魔法陣が浮かび上がる。男のつぶやきの最後、短い掛け声らしき物に合わせて、その赤い物から握り拳ほどの大きさの火の球が前に飛んでいく。


 こちらの音に気づいたのか、人間の子供ほどの大きさで緑色の肌をしたゴブリンと呼ばれた半裸の者たちが岩陰から姿を現している。その先頭1体の胸に火の球があたり、さらに矢が刺さり、そこに突っ込んできた男の片手剣で首を斬られて倒れる。

 その後に居たゴブリン2体が棍棒を振りかざして来るが、男は盾でそれらを防ぐ。何度かの火球や矢と片手剣による攻撃でそれら2体も倒したところで一息をつく。


「皆さん流石ですね。今回も怪我一つされずに」

「この階層程度であれば、ラルフさんご家族を危ない目にあわせることはありませんよ」

「ありがたいです。子供たちに浅い階層の各階への到着証跡を付けてあげたいだけなので」

 しゃがみ込み女の子2人を体で守るようにしていた男性が立ち上がり、片手剣の男に話しかける。

「1階の草原地帯、2階の森林地帯は無事に来ていますし、目標の3階の洞窟地帯までもう少しですよ」

「ありがとうございます。あと少し、よろしくお願いします」

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