第310話 フィノイス周辺の村支援2

「情報通り敵兵がいないかは、我々が確認して来ます」

 護衛について来てくれたステフェンの守備隊の1人が囮として、壊れされて閉じられなくなっている門から村の中に騎乗のまま入っていく。

「ステフェンの守備隊である。救援物資を持参した」

 装備などをみて敵の神聖王国軍でないと分かったからか、村人たちが家から出てくるのが、遠目でも分かる。


「もう神聖王国軍は居なくなったのだな?よし、怪我人はどこだ?できるならば村長宅か集会所に集まって欲しい。動かせない重症者は、戸口に立った人がそのことを教えて欲しい」

 手招きされたユリアンネたちは、引き続き警戒を怠らない守備隊の4人と共に村に入り、怪我人、特に重症な人を優先して治療していく。


「なんでもっと早く来てくれなかったんだ!」

という怨嗟の声と、

「あぁ、助かりました!ありがとうございました!」

という感謝の声。覚悟はしていたが、間に合わなかった人、たとえ高級品の傷回復でも治せない人も居る。


 それでもできるところまで治療をした後は、ジーモントが中心に食料を配る。

 炊き出しで煙が見えてしまうと、また敵兵を呼ぶ可能性があるため、火を使わずに食べられる物を配るだけである。


「我々が取り急ぎできることはここまでである。申し訳ない。もし避難するのであれば、ステフェンの街で受け入れ準備ができている。少し遠いが頑張って欲しい」

「連れて行っては貰えないのですか?」

「申し訳ない。我々は別の村の怪我人の対処などを優先させて欲しい」

「そんな……」

「いえ、わかりました。怪我人を優先でお願いします」

 感情的には受け入れて貰えていない人が居ることも分かった上で、次の村へ移動する一行であった。

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