第476話 トリアンでの待機状態

 フェルバーたち魔術師団とマンファンたち衛兵団の会合の後も、“選ばれた盟友”の7人の活動内容はそれほど変化していない。


 シャドウとフェザーの兄妹は、独立騒動がおさまらないと出航制限は解除されないと思われるので、引き続き生活の糧を得るためと自分たちの訓練のためにダンジョンの探索を継続である。

 魔術師団員たちも、ルオルゾン領や王都に送った手紙による援軍等が来ないことには、15人だけで戦争を起こせないし、慣れない街でこれ以上の情報収集で目立つことは危険との判断である。それなりの軍資金は持参しているが、いつまでかかるか分からない待機状態では先々が不安になるのもあって稼ぐためと、街に溶け込む冒険者としてのカモフラージュと訓練のために、彼らもダンジョン探索を継続している。


 衛兵団たちは、略奪のような過剰な徴集行為が行われない限り、独立派と表立った衝突を発生させることはなく、見た目は通常の衛兵活動を継続となる。

 もちろん、悪事の背後にはエードルフ・シャイデン男爵が居ると考えて、特に“闇ギルド”に関することには注力することをマンファンたちは意識している。ただ、トリアンの街全体に対してではなく、独立派に感付かれないように街の東側を所掌する自分たちが所属する中隊だけの範囲ではある。


 関係者たちがそうであるため、“選ばれた盟友”の7人も基本的にはダンジョン探索への同行ばかりである。


 ユリアンネ自身も何か気が紛れることがある方がオトマンのことを考え込まなくて良いと理解しており、ダンジョン探索で魔物などに気を配ることを意識している。ふとしたときに落ち込んでしまうこともときどきはあるが、仲間たちが気遣ってくれるし、魔物の襲来があると応戦せざるをえないため、気持ちの切り替えは少しずつできて来ている。

 とはいえ、ある意味でオトマンの直接的な仇であるエードルフ・シャイデン男爵の私兵、そして男爵自身に何か行動を起こす意識にはなっていない。

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