第472話 トリアン北部のとある屋敷2

「お前はいつも同じようなことばかり言う。全然成果が出ていないではないか」

「(何度も同じことを問われるから答えも同じなのに、頭が良くないのは扱いやすいが本当に面倒だな……)はい、成果も出ていますよね?モンタール王家に召し上げられる税を払わずに済んでいますよね」

「それは確かに」

「独立の一番の目的は、トリアンダンジョンで得られる利益を、何もしていない王国に取り上げられる不満だったではないですか。それを達成しておりますから」

「だが、かわりにあの吸血鬼ニキシオンとやらに折角の魔石をたくさん渡すのが勿体無くて、な」

「それは仕方ないですよ。モンヴァルト山脈に多くの高ランク魔物を用意するのに必要というのですから。大量の魔素、魔力を提供するには、ダンジョンから上がってくる素材の魔石が効率的ですし」


「まぁニキシオンの奴のお陰で、真モシノム大公国やピザリア神聖王国とも連携が楽できたのも確かだな。あの2国と協力してモンタール王国軍を押さえ込むことで独立国家として盤石になるというもの」

「その始祖ニキシオンとの交渉ができたのも、インガルズ様の血統魔法のおかげ。偉大なるストローデ領主の血筋である証明でもある血統魔法に優れたインガルズ様が、侯爵家の当主にふさわしく、またストローデ領を独立させた国王に相応しいと存じます」

「またお前は上手いことを。これからお前にも十分に報いてやるからな」

「(血統魔法だけが取り柄の領主代行。上手くおだてて使っていかないと……)」



「よろしかったのでしょうか?ピザリア神聖王国がモンタール王国の反撃を受けて撤退したことをまだ報告されなくて」

 インガルズをなだめて来たエードルフに対して、同じ独立派であるクハルリヒ・ロイヒョー準男爵が確認する。

「過剰に心配をされてしまう方だから、な」

「始祖ニキシオンが配下の吸血鬼モラク、ダニロがやられて不満が溜まっていることも?」

「もちろん。適切なタイミングで報告するから心配しなくて良いぞ」

「承知しました」

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