第491話 踏み込み
「ユリ、大丈夫か?」
「えぇ、少しでも役に立てるならば、頑張るわよ」
トリアン東部の港街のとある場所で、ユリアンネは目をつぶっている。
「見つけたわ。こんな小さな窓しかない離れだなんて最初からそのつもりの部屋なのね」
「よし!で、その監禁部屋の見回りをしている人数は?」
使い魔シルヴィスを操り、“闇ギルド”の拠点の1つを捜索しているユリアンネ。近くにはシミリートたち仲間だけでなく、マンファンたちも待機している。
「それにしても、肉屋の奥が麻薬の拠点とは思いもしないよな」
「ガラの悪い男たちが出入りしても、魔物の肉の取引と言い張るためだったとはね」
「これから仕入れ先にも気をつけないとな」
「ジモの実家がそんな怪しいところから買うわけがないじゃない」
じっと待機することができない仲間たちの無駄話を目線で注意するシミリート。
「いくぞ!」
ユリアンネが目をつぶったまま、腕で合図をしたのと同時に、表の肉屋、裏口それぞれに分かれて強制踏み込みを実施する。
「東部旅団のマンファン分隊である。大人しくしろ!抵抗するものにはそれ相応の対処をする!」
「これは、これは。衛兵団の皆さま。本日は何用でしょうか?」
「しらばっくれるな。麻薬の調合や取引だけでなく、その実験のためにも人をさらって監禁していることは確認済みだ。そこをどけ!」
「どんな証拠があるというのですか?横暴ですぞ!我々の後ろ盾には貴族様もいらっしゃるんですよ。たかが衛兵の下士官程度、どうとでもなるのですぞ!」
「ほぉ、その貴族様のこともまた後で教えて貰おうか。気にするな、奥だ、奥に行け!」
“闇ギルド”であり手強いのも居る可能性があるため、ユリアンネとドロテアという魔法使い、そして元々衛兵であるシミリートだけは戦闘に参加する前提で、その他のヨルク、カミラ、ゾフィ、ジーモントは逃亡者が居ないかの見張り役とユリアンネの護衛で協力している。
裏口から奥に踏み込んだシミリートは、事前に認識している監禁場所へめがけて走っている。ドロテアもその後ろを付いていく。
「シミ!」
ユリアンネがつい叫んでしまう。
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