第504話 狼煙2
独立派のストローデ国王を名乗るインガルズが号令を出して、エードルフ・シャイデン男爵を中心に寄子の各貴族が家臣団の出陣準備を行なっている。もちろん直臣である金虎騎士団と銀虎騎士団も準備の指示が出ているが、金虎騎士団は侯爵家の近衛であるので迎撃部隊としては銀虎騎士団が主戦力になる。
「ダンジョンの魔物の間引きをしていた冒険者が減り、さらに今回の迎撃のために銀虎騎士団が減るとなりますと、ダンジョンからの資源回収が滞ります。魔物の間引きが減りますとダンジョンの魔物氾濫(スタンピード)の危険度も上がります。そういうトリアンの事情を踏まえて、銀虎騎士団による迎撃派遣は最低限にして頂けますと……」
「もちろん分かっておる。銀虎騎士団すべてに出陣を求めてなどおらん。5旅団15大隊のうちまずは1旅団3大隊ほどで様子見をしないか、と言っているだけだ」
「それでしたら、承知しました。まだコルバックからの狼煙1つ。相手の規模も不明な状況ですので、まず情報収集、事実確認から行いましょう。何せ、王都から軍勢が来るにも早いかと」
「分かった。しっかり頼んだぞ」
寄子貴族たちも全員が独立派ではない。ただ家族が人質になってしまうため実権を握っているインガルズに表立って強く反対できないが、王国軍と直接対戦になるのも避けたい。
「まったく、あいつらのやる気の無さと言ったら」
「あいつらは独立に対して協力的ではないですからね。それでも情報収集が重要というのは確かかと」
「ならば、お前の私兵が得意ではないのか?寄子騎士団の出陣とは別に調査をさせろ」
インガルズがエードルフに指示する。
独立宣言の後すぐにトリアンの街中で略奪とよべる強引な徴集を行う独立派と、主に反対派である衛兵団の衝突があったが、それ以降は小康状態にあったトリアンの街。
今度は本格的な戦争準備の気配であり、食糧になる魔物の肉や傷回復のポーションなどの買い占めが始まっている。
「冒険者ギルドとしては、ダンジョンに潜って素材回収をする方を増やしたい時期なのですが……」
冒険者ギルドの応接室でポーション納品に来たユリアンネが、職員に言われた言葉である。
「状況が状況なので仲間と相談しますね」
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