第423話 ワイバーン、再び2

 飛龍(ワイバーン)をエックハルトが倒してその死体を回収したところで、再び撤退を指示したニキアス。

「もう日も暮れてきます。この谷間はますます暗くなるでしょうから、できるだけドレイクとは離れて野営場所を確保しましょう」


 地龍(ドレイク)たちが登って来られない程度の斜面で、自分たちが休憩できるような場所があれば良かったのだが、そんな都合の良いところはない。仕方ないので、ユリアンネなど土魔法を使える者たちで≪石壁≫≪土壁≫を活用して、簡単な囲いを作る。

 ドレイクは大きなトカゲのようなものであるが、戦いの際にもそれらを登ることはできていなかったので防御には十分と思われる。ただし、空を飛んでくるワイバーンには、逆に逃げ場がなくなるので、ドレイクたちとは反対の西方面は開けておく。

 知らぬ間にドレイクに回り込まれることがないように、夜警当番はそこを意識するように指示されている。


「これだけしっかりした囲いがあると、斜面で上位ハイオークを警戒していたときよりも安全かもな」

「油断していると、空からワイバーンがやってくるぞ」

「そのときにはエックハルトさんに」

「人任せだなぁ。まぁ俺もそう思ってしまったけれどな。アハハ」

 安全策で進んで来たことで、大きな怪我をした者も居ないことから油断が広まっていることを懸念するニキアス。

「シミリートさん、大丈夫ですかね?」

「確かに危険ですが、不安で夜が寝られないよりは良いことかと。万が一にでも襲われたときには、我々が踏ん張っている間に体制を立て直して貰えますか」

「ユリアンネさんとシミリートさんは、普通の冒険者の方々と違い色々とこちらを理解されているので助かります。その背景を伺う無粋なことは致しませんので、引き続きよろしくお願いしますね」

 シミリートは、自分が迷宮都市トリアンの衛兵であることをニキアスたちが知るよしも無いはずと思っているが、ユリアンネはさらに自分が転生者であることを誰も知らないはずと言い聞かせてその話を聞き流している。

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