第556話 シャイデン男爵の行方

「結局、この毒薬騒動は、シャイデン男爵の仕業と考えて良いのだろうな」

「そうですね、フスハイム子爵の屋敷でのときと同じようですので」

「くそ、足取りをつかめないままこのような騒動を起こされるとは」

 ルオルゾン領主のルーベルトは怒りの矛先を部下に向けるわけにいかず、逃げられたままのインガルズ領主代行とシャイデン男爵の捜索を再指示するだけになる。


「それにしても、インガルズは国王を宣言したのに、シャイデンは男爵のままだったのだよな。なんでだ?」

「それが、独立反対派の筆頭のフスハイム子爵達が新たに爵位を配られることを拒んだらしく。そうなるとストローデ領内での統制も難しくなるので、右腕のシャイデンすら陞爵(しょうしゃく)させるわけに行かなかったようで」

「ふん。そうなると、ますますここの反対派だった貴族達への処分は難しいな……」

「まぁ止められなかった罪はあるとしても、責任を問うべきはインガルズ達に。意識が無かった領主ストローデ侯爵家当主のインリート殿や未成年の嫡男デレック殿も完全無罪とは言えないでしょうが、情状酌量の話になるかと」

「……そうだな」



 独立を阻止しに来たモンタール王国軍、実質は隣領のルオルゾン領の領主達の思惑とは関係なく、トリアンの北方に居るシャイデン男爵。

「良くやった。これで追っ手の数も抑えられるであろう」

 フスハイム子爵邸も狙わせた女暗殺者を労っている。

「それにしてもインガルズ様は一体どこまで逃げて行ったのか。1人だけ先に逃げて。北方のビザリア神聖王国を目指すしかないはずなのに」

「もしや始祖吸血鬼に連絡を取りに行ったとか」

「うーん。いや、それは無いだろう。トリアンダンジョンからのアガリである魔石が少なくなり、あまり供給できなくなってからは、あのニキシオンとかいう吸血鬼は怒っていたからな。山脈の魔物を生み出せなくなると脅されていたが、こちらも無い袖は振れず仕方なかったのだが」

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