第557話 シャイデン男爵の行方2
「我々もこのまま北方、ビザリア神聖王国に逃げ込むのですよね?あちらに行ってからも何とかやっていけるのでしょうか」
シャイデン男爵の取り巻きというには品の悪い裏稼業の者達が多い。
沈む船からネズミは早々に逃げるというからな、と表情に出さずに自嘲(じしょう)する。
「大丈夫だ。今回、我々はビザリア神聖王国と同盟を組んでいたのだ。彼らが王都シャトニーに攻め込めるように南方の真モシノム大公国とタイミングを合わせるよう調整したのも我らだ。亡命しても受け入れる程度のことはするはずだ」
「なら安心しやした。あっちに行けばしばらくは遊んで暮らせますかな」
自分も腹の中は同等レベルであることを棚に上げて、品の悪い裏稼業の男の口調に眉を顰めてしまうシャイデン。
「もう良いだろう、明日も移動だ。休むぞ」
愛人でもある女暗殺者を抱き寄せて、手下達を天幕から外に出るように指示する。
迷宮都市トリアンの北方で野営をしていたのである。追っ手のことも考えて、数本の木が生えているところで火も炊かずの野営であり、ロクな食事も取れないため皆の不満が溜まる。ただ、自分自身も不満でありそれぞれの機嫌が良くない状態ではあるが、ともにトリアンに残っても未来がないことは確かなので、今のところは一緒に北方への逃避行である。
「このままではアイツらもいつか裏切る可能性があるな。そのうち……」
半分寝言のような発言をしながら、女暗殺者を抱いて眠りにつくシャイデン。
「さぁ夜が明けた。火を使っても良いぞ。やっと、あったかい飯が食えるな」
翌朝になり皆が鍋で温めた食事をとるが、すぐに喉を抑えて倒れ込む。
「どういうことだ……」
「男爵様の意向です」
食事の準備をして配膳をした女暗殺者の返事である。
同様に天幕の中で先に食事をして苦しんでいるシャイデンに対して、フラフラになりながら剣を持って迫る男達。
「なんだ、お前達……うわ!」
「お父様、お母様。ようやく仇を取ることができました」
全員が息絶えたことを確認した女暗殺者が涙を流しながら呟く。
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