第448話 書店の現状
シミリートの実家の武器屋の隣にあるはずの書店、“オトマン書肆(しょし)”が無くなっていることに驚いているユリアンネ。そこにあったのは防具屋であった。
「ユリ……」
「お父さん、どういうこと?」
声をかけて来たラルフに振り返って質問する。先ほどまでの仲間たちの家族の表情や微妙な言葉が思い出されてくる。
その店頭前での様子に気づいて出てくるシミリートの家族。
「ユリちゃん……お帰り。ここではなんだから、こっちに」
シミリートの母はシミリートの存在に気づいたかもわからないような態度で、ユリアンネを気遣い店の応接室に案内する。
どの実家でも新メンバであるドロテアの紹介をして来たが、ここではそのような状況ではない。
皆が着席しお茶を配られたところで、ユリアンネが我慢できずに発言する。
「どういうことなのでしょうか……」
「ユリちゃん、落ち着いて聞いてね」
「いや、私から話します」
ラルフが説明をすると手をあげる。
「ユリ、みんな。このストローデ領が独立を宣言し、このトリアンでは独立賛成派と反対派が対立して抗争が発生したことは見て来た通りだ」
ここに来るまでの道中で、ところどころの建物に被害が出ていることを見ながらそれらの話をラルフから教えられていた。金級冒険者エックハルトと銀級冒険者シグランの二人からも聞いていたが、その跡を実際に見ながらでは実感が違った。
「その中で、独立派の一部に、オトマンさんの書店も目をつけられたんだ。こちら“輝星(きせい)の武器庫”も」
シミリートの母が頷く。
「独立戦争になると思われるから、軍需品になりそうなものを徴集しようとしたらしい」
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