第64話 転移/南の国
「鑑定スキル一つをとってもまだまだ修行が足りないから、はやいところランクとレベルあげるよ」
「まさか差があるとは…俺のステータスがこっちの世界で読み替えさえできれば鑑定レベル教えれるんだけど、現状俺の方の画面では[鑑定]としかでていないからな~」
その後夕食の時間になったので、なぜか料理人である兄がいるというのに晩御飯は私がつくり(豚の生姜焼きにした)、王城にもアオくんが届けた。兄は家庭料理の味がする~!とか言っている。魔法使いさんは、無言でごはんに肉を乗せ、掻き込んで食べている。アオくんに至ってはチーズさんの料理、食べ慣れると癖になりますよ!とうれしいことを言ってくれる。
一応、みんなの口にあったようで、安心した。
「そういえば、大学とかで酒造りとか学んでたりするか?」
食後、兄が突拍子もなく聞いてきた。
「さらっとは。部屋に本は何冊かあるよ。もし読むなら持ってくるけど」
「頼む!ゆくゆくはワイナリー併設のレストランとかやってもいいかなって。俺がやる気になったらアドバイス頼むよ!」
まずワインにつかえるぶどうっぽい木を探してくるところからだけど~あと気候の問題もあるけど…どうかな~…クラフトジンからウイスキーも捨てがたいとか独り言が続いている。
一体この兄は、これから一体何をどこまでしたいのだか。
そんなこんなで夜更け、ういと部屋に帰り、ぐっすり寝た。やっぱり自分のベッドは最高である。
因みに兄は自室、魔法使いさんとアオくんはそれぞれ2階にある一人部屋で休んでもらっている。実は前に牛の世話を手伝ってもらってから部屋はそれぞれ割り当ててあり、好きに使って良いよといってあるので、一体いまどんな装飾がされているのか、プライベート空間だけに立ち入ることはしないが、それなりには気になってはいる。気分は寮母だ。
◆
翌朝、イオくんからアオくんに魔女さんのパワー充填が完了て、転移の準備ができたとの連絡がはいる。いよいよ次の冒険の合図だ。
「兄さん!転移の準備ができたらしいから私たちは一足先に南の国に行ってくるよ!」
兄は鶏の面倒を見ている。なんだかんだで実家の仕事は体に染みついているようで、淀みなく作業を行っている。
「おう!いってらっしゃい!俺はここを拠点にしつつ隣の国でこの世界で生きていくのに必要な条件整えてくるわ!」
そして、強くてニューゲーム~とか鼻歌交じりに言っている。
因みに救国の魔法使いさんは朝が弱いのでまだ寝ている。
一度王城に戻るコストがもったいないため、私の自室に魔女さんからの通信モニターを開いて、アオくんの持つ転移魔石経由で魔女さんが、魔女さんの別宅まで送り出してくれる算段だ。魔女さんの家は北半球では国の郊外に置くようにしてあったが、南半球の国では都市部のはずれにあり、その国に暮らしている人に溶け込めるような見た目の使い魔がメイドの風体で暮らしているそうで、外国人が住む場合現地のメイドを雇うという文化にあうように生活していた、とのこと。
因みに今回行く国の使い魔の正体がなにかあててみよ、と魔女からの課題もある。
今日は気合を入れて、赤いつなぎに黒いスニーカー着用。中は水色のライヴTシャツだ。
ちなみに、今回はアオくんが認識錯誤の魔法をかけてくれるから、現地で突然普通に生活しても問題ないらしい。治安面があるため新参者とならないほうが良く、あたりまえのようにそこに前から住んでいて、生活している風体でいく、とのこと。順応力が試される。
『準備できたか!じゃあいくぞ!私の使い魔ちゃんたちをよろしくたのむ!」
そういうと、アオくんの持つ転移魔石が青く光り、まぶしくて目を閉じた。
◆
目を開くと、生活感のあふれる、ちょっと魔法の試薬と思しき匂いが鼻をツンと刺激する家にいた。
「これが南国!って暑くも寒くもない!」
家の中はエアコン?が効いているらしく適温であった。
「試薬とかがあるので、家の中は暑くはしません」
そんな話をしていたら、正面に2人のメイドが現れた。
「ご主人様から、仰せつかっています。いらっしゃいませ、チーズ様、アオ様。こちらの国は『アトル』といいます」
黒いロングドレスに白いエプロン、髪の毛は後ろでひとまとめにした女性が二人お辞儀をしてきた。
「はじめまして、よろしくお願いします」
「私の名前は
「私の名前は
凍結の魔女様。使い魔の正体を見破れとかいうミッション、あれ、冗談だったのですか。そうじゃなければなんでこんな名前をつけたのですか。
なんということでしょう。見破るまでもなく、名前が正体そのものではないですか。
茫然としていると、志摩が家の中を案内し始める。
「ここがリビング。1階にはリビング、キッチン、お風呂、お手洗いのほか、魔女様とアオ様イオ様の居室があります。続きまして階段を登って2階、客間が2部屋あり、いずれも使用しておりませんので、チーズ様、いずれかの部屋をお好きに使ってください。」
さっきまで間貸ししていた私の家の間貸し部分に私が入るというわけかな。新しい拠点にかなりわくわくするのであった。
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