第225話 密室ノ会・祈(18)
さっきの電話で
『もしかして牛乳飲みたいとか茶菓子が欲しいとか言われた?じゃあちょっと試作のパフェ今作ってるから3つ入れとくから感想あとで教えて。順番は牛乳、パフェ、お茶と小菓子の順番で食べ終わったところで出して』
すべてお見通しぶりがすごい。と言うわけで、グラスに牛乳を注ぎ、2人に出してみる。洗った上にしっかり磨いたためくすんでいたグラスは今やピカピカだ。目の前の2人は職務中だと言う事を忘れているようなくつろぎっぷりでちょっとめまいがする。
そういえば、相手は王。「先に毒見ということで飲みますね」と言い、一気飲みする。変わらず旨い。
「大丈夫です、どうぞ」
そう言い、それぞれの目の前に提供する。
「牛乳!飲んでみたかったんだ!……??」
「……甘い、といっても単純な甘さじゃなくて…なんだ??」
目を輝かせ、初めての味に混乱をしている様子。ちびちびと、味見をしながら飲み進めている、と思ったら、どんどんスピードをあげ、なんだかんだあっという間に飲んでしまい、でも、おかわり!と言えない様子で。
「牛乳のおかわりはまた後で承るので、これをどうぞ。シェフからのサービスです」
そう言い、パフェを出す。僕の分もテーブルに出し、スプーンもつける。
「
「お前がさっき頼んでくれたのか?!これ、食べて良いのか?!」
王もコウコさんも未知の美しい食べ物に目を輝かせている。僕もそれほど詳しいわけではないけれど、何度か試食に付き合ったぐらいの経験はある。見たところしっかり牛乳ソフトクリームを使用したパフェ、パフェの土台にはクラッシュしたクッキーにベリーソース、上にはフレッシュフルーツとハーブを乗せ、飴細工を刺してある。なんというか佇まいが美しい。
「私の網膜にしか映せないことがもどかしい」
「美しいなあ」
もしかしてこの人たち、映像転写スキルをご存知ない。
「溶けるまえに食べてくださいね。提供した時間が一番美味しいって言ってましたよ。またもや毒見は今食べてます僕が」
とりあえず最高の味を賞味するがためにどんどん食べ勧める。改めて言うけど、美味しすぎる。本当にこの世界で食べたことがない意味が分からない味がする。
この世界で食べてきた食事はちゃんと美味しい。だけど、
「おお、それはすぐに食さなくてはな。これは例の救国の勇者が作ったんじゃな?」
「そうですよ」
王とコウコさんは一口食べてみる。
「美味しい!あの強さでこの料理の腕、本当に得難い」
「今この国を拠点にしてくれているだけでラッキーですよね」
そこまで話したところでもう一口くちに運び、その後は無言でたいらげるまで食べ進め、すっかり容器が空になったところで一息つく。
「これは、すごい。今まで食べたことがない。さきほど飲んだ牛乳が原料なのだろう?……どう加工したらこんな味の甘味になるのか」
「食べ終わった後ですが、また食べたい…気づいたら消えていた…」
兄さんの魅了が効いていたのかいないのか、あっというまに食べつくし、そろって空の容器をじっと見ている。その気持ちわかりすぎる。だけど、
そこでお湯を沸かして紅茶を淹れる。抽出の間に小菓子、クッキーを1人2枚ずつを準備する。
配膳しながら、気になっていたことを聞いて見る。
「そういえば、あの3冊の本、何だったんですか?作者に見覚えはあったんですけど。多分母の蔵書で」
「そうか。お前の魔力に当てられ書き換えられた方の表紙にある名前は、百年前ぐらいにいた高名な魔術師の名前だ。この国が疫病に侵されることで強い魔力を持つ子が極端に産まれなくなってしまう前の魔術師だ」
王は僕の顔をじっと見る。
「お前はこの国の縁者だというのに、魔力総量が大きく、技量もある。しかも魔力暴走の経験者……その齢で親と共にいるわけでもない。詮索はしないが、今までの人生、苦労があったのだろうな」
僕はそれに応えることはできず、じっと王の目を見る。茶色がかかった黒、瞳の奥に大きな魔力が渦巻いて見える。この眼に僕の人生はどう映っているんだろう、一国の王だけあって、何かしらの力があるのかもしれない。
「まあ、そのことは今はいい。お茶のおかわりいただけるかな?」
「かしこまりました」
今日準備したのはチーズさんに分けてもらった紅茶。ウバ茶という茶葉らしい。因みに
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