第226話 密室ノ会・祈(19)
紅茶と小菓子をいただいたところで、やっと本題。
例の3冊の本だ。
作者名はすべて『
「紅鳶はこの国が疫病の大流行で魔力を持った子供が生まれる数が減る前に現れた天才でね、魔術留学をしたうで高名な魔法使い…世界の双璧の男の方『救国の魔法使い』に弟子入りしたとい逸話をもったこの国の大魔法使いさ」
「え、あの人弟子いたんですか?!」
確か師匠の話では世界の双璧に弟子入りしたのは僕たち姉弟が初めてとかいってたけど、もしかしなくてもあんな大口叩いて認識してなかっただけじゃないか。そこまで言ったところで王が訝しげにこちらに問いかける。
「むしろ君は『救国の魔法使い』と面識があるのか?」
あ、しくじった。これ、言っていいのか悪いのかがよくわからない。王よ、あなたも面識があります。困った挙句なんとか言葉を返した。
「ええ、まあ…どうでしょう……詳しくは知らないのですが噂では……」
思わずうつむいてしまった。ははは。どうしようか。
そこまで言ったところで、コウコさんが目を輝かせ、早口にまくしたてる。
「
やっぱりだてに長生きしていない、と言うか、2人そろって全力で正体がばれないような行動の後始末はしていた、ということみたいだ。師匠に至っては全盛期どころか僕たちと同じぐらいの年齢で見た目偽装しているからコウコさん、会ったとしても気が付けるんだろうか。救国の魔法使いに至っては
「こらコウコ、一気にしゃべるから碧生がびっくりしてるぞ。あとお前がそんなに頑張って説明しなくていいほどに世界の双璧は有名だ。そしてお茶おかわり」
「かしこまりました」
王にお茶を注ぎながら、これは不要と言われるまでお茶、淹れて差し上げるのが正解なのではないかなどと思い出した。
「話を戻そう。さっきの3冊だが、禁書に該当するために持ち出しは厳禁だ。しかも碧生が成人を迎えてある程度の功績を残さないと見せてあげることができない。紅鳶の著となるとなあ……。なにかあってもまずいから、忘れた方がいい可能性がある。しかもなあ、問題が私には白紙に見える。王はどうだろうか」
「……多分碧生が見ている文字とは別の文字が見えているな。紅鳶は女性でな、先ほど救国の魔法使いに弟子入りしたうえで憧れを通り越して恋愛感情を抱いたと言われているが、結果理由はわからないがかなり酷い振られ方をしたようなんだよ。こんなことが後世まで残ってしまっていることは不本意かとはおもうが、まあ、それのせいで国に帰った時点でものすごい荒れ方をしていてな。そのままある山に篭り何かの魔術の研究をしていてな、様子を見に人を遣っても追い返す始末だったが、ある日出てこない日があったときにはこと切れていた、というわけだ……なぜ目を輝かせている。変なことは考えるな」
俄然興味が湧く、その家といい、その魔術といい。その家にノリさん連れて行ったら何がおこるか興味がある。万が一のときのためにういがいれば全部祓えるだろうし。
「僕には『いまここに私の研究した魔術の一部を書き記す』と読めたのですが、王にはその本に何がかいてあるように見えるのですか?」
「……我が愛にあだなすものには災いを。今引き返さぬと命の保障はないとおもえ……危険にもほどがある。女性は絶対読んでは駄目な本だな」
前言撤回すぎる、これ、性別と魔力量が判断条件なのか?!とんだ魔術書だな。
「そして今、その
「禁足地だ」
「きんそくちですか」
「社も建てて祀ってある。近代で王族以外で唯一祀られている」
「それって……」
「皆までいうな。しかし、生きている間はそこまで酷いことはなかったのだが、一体何をやっていたものやら」
ナット王の受けた呪い、あれは命を賭した呪いの可能性が高いと言う話は聞いていたけれど『救国の魔法使い』はナットに縁がないからさすがにこの紅鳶さんとは因果関係がなさすぎる。
関係ないよな……?
「ここまでの話はシラタマ国の人間ならある程度知っていることだから、別に機密でもなんでもないから、まずいものをきいちゃった!と思わなくていいからな」
「わかりました」
「あと、ミルクスタンドの連中と連れ立って禁足地に行こうとしないように。紅鳶がこの世を去ってから何度となく図書館で書籍探しをしているがこんなことは初めてだ。しかも一番頻繁に行われる【グレード1】でだ。お前に何かがあったらお前の親御さんに申し訳が立たない」
母の故郷の王、シラタマ王が僕の心配をしてくれている。
母も王と関わることがあったのかな。
「両親は亡くなっていますが、でも、言われたことは王命として肝に銘じて守ります。ここに入れなくなる方が僕にとっては問題ですから!」
そう言うと王とコウコさんは僕に対してちょっとまずかったかな、って顔をした後微笑みかけてくれた。
そして、そろそろ時間だと言い幾許かキレイになった部屋を出た。
換気扇とコンロはピカピカになっていた。
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