第39話 ネルド/嵐の日(3)
防音壁を解除し、冒険者の宿のリビングに出る。ほかの冒険者チームも武器を手に持ち、部屋から飛び出てきた。
「城が炎上しているけど、奇襲かな」
「Cランクでも対応できる変異ならいいけど。」
口々に状況を確認しながら、外を確認する。
私も【視力強化】を使い城を見ると、大きな紅色のドラゴンが城に居城を構え、中サイズくらいのドラゴンが周りを取り囲んでいる。その様子を同じように視力強化で見ていた弓使いの冒険者が口を開く。
「これ、ドラゴンの厄災じゃない?」
みんなそろって表情が厳しくなり、手際よく防具を身に着け、持ち物をチェックしながら脱出の準備を進める。
「昔から有名だった『ドラゴンの厄災』にまさか立ち会うことがあるとは」
片手剣と盾を装備、軽易な鎧も装備している。あまりにも私の周りが魔術寄りで軽装なのでそういう人をみてしまうと鬼気迫る中でもファンタジー!!!!っておもってしまった。
「最近この国に張られていた防御結界が弱まってたから、ターゲットになっちゃったのね。ドラゴンの巣の移転にたまたまひっかかたがために国ごとドラゴンの巣となる伝説の厄災よね」
「王族の方々は無事かしら。冒険者ギルドの役割として命をだいじに!できる限り住民のみんなを逃がすこと!逃げ延びたら難民キャンプの立ち上げを手伝うこと!だよね」
「昔厄災をくらった廃城とかこの国にあったか?」
「確か南に10キロぐらいだったはず」
情報交換をしながら、次々と部屋から飛び出ていく。
「私たちもなにかしなきゃいけないってことだよね」
「Cランクの冒険者が嫌というほどいるから、そこまで先頭に立たなくていいとおもいますけど、まあまあFランクだけどサポートしておいた方がこれから冒険しやすくなるかなーって感じですね。そして僕はギルド無所属なので悪目立ちしたくないから主となっては動かないので。ただ、チーズさんが危なくなった時だけはその限りじゃないですよ。」
あざっす、鬼教官。
よし、忘れ物はない。
紅色の赤竜は火を発し続け、その配下のドラゴンたちもすべて体から火を発し、炎の中で生活する。
故に、赤竜のターゲットになった国は炎に沈む。そして竜はなぜか、王城を好む。
避難はこちらへ!
大嵐の中、冒険者たちはこの国で暮らす方たちを誘導やワープスキル等でどんどん逃がしてゆく。
まだ、炎は王城のみであるが、ゆくゆくはこの都市が全部炎に沈むだろう。
ドラゴンの厄災が起きた時、Sランク冒険者とかがいれば、ドラゴンを倒すという選択肢も出てくる。
しかし、一度ボス竜を倒しても倒した場所と同じ場所からポップアップするので、まず移動させてから狩らないといけなくなるため、とても厄介だ。
ゆえに、厄災が起きた場合、そこは高ランク冒険者のドラゴンの狩場になるだけで、王城に居を構えていた王族、近隣住民は指をくわえてみていることしかできず、なす術がまったくない。
私にできること、これならできるかも。ランクは低いままでも、レベルが上がったことにより対象範囲は増加しているみたいだ。
『鑑定』ソート:『生体反応』『人間』『ペット』 範囲:国全体
逃げ遅れがいないかどうかぐらいはいけるいける。
国全体を見渡したところ、民家3軒に生体反応、生体反応のある場所に行きそれぞれ救出しにいったところ、家族連れで家から出られなくなっていた一家が一つ、あと二つは逃げて飼い主からはぐれたであろう真っ黒い猫と、三毛猫がいた。
「この国って猫いるんだね」
「むしろ、チーズさんの国もいるんですね」
ドラゴンから噴出している火の手が迫ってくる。
そこで思い出すのがモヤ王。ナットのものは資金調達のために売ってしまった、と。
この国にある、二束三文で買いたたかれたナット産のものはすべて貴重なものなのではないだろうか。
『鑑定』ソート:『ナット王国の産業』、アイテム収納レベル『緊急』
アイテム収納レベル『緊急』とは、すべてのMPと引き換えに、手を振れることなく、鑑定したアイテムを一気に私の無限フリースペースに収納できるスキルだ。
このネルドに住んでいた方々に話はつけなきゃいけないとは思うけど、最初に身を寄せた国の先人の産業を残してあげたい。
火事場泥棒みたいな感じになってしまうが、今のままではすべてドラゴンに焼かれてしまうことを考えると居てもたってもいられず、一時収納をしてしまった。
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