　ネルドから南に２キロ地点、ネルド国の王国民の避難所が開設された。

　雨風は結構まだきついが、ピークはこえてきたようだ。雨がたたきつける中、手際よく次々とテントが建てられていく。

　中にはコテージみたいなものもいくつかあり、身分の高い人には建築に関する魔法を持つものが仕えていて、駐留地で快適な家を建て、翌日には解体し次の駐留地に向かう。

　そんな中、市井の方々が集まる一帯で、いてもたっても居られず持ち出したナット産のあれこれについて「持ってこれる分だけ家具や工芸品をもってきたので、思い当たるもの等があれば声をかけてほしい」といったところ、避難者たちの顔がとても厳しくなり、ここ数年なんとかって国から買った家具や道具がきたからドラゴンの厄災が来たんだ。どこだか覚えていないが困ってるとかいってたからいりもしない家具と食料品を交換してやったのに、など、認識阻害が大きく働き、ナットのものがあるせいで結界が弱まったという風評被害のような話になり、すべて捨ててくれ、という話になった。

　燃えてしまえばよかったのに、まで言われたときはすこしへこんだ。

　ナットが食うに困り国のものを次々放出したのは悪政のせいではあるのだけれど、買いたたかれて放出して疎まれる。

　まるで戦後日本の、農家としては不要な高価な着物や宝飾品と、その日を生きるために貴重な少量の食糧の物々交換、売る方と売られる方それぞれその『もの』に対してが感じる価値の差を彷彿とさせた。

　どちらも不幸でしかない。

　が、黙る。

　ほかの冒険者さんたちは、テントを張ったりと大忙しなのだけれど、私は私の戦場で働くことにした

　それはそう、炊き出しである。

　大量調理。これはやったことがある人しかできない特殊スキルに近いもので、農家の地域の寄合、それこそ災害時対応のために一般家庭とは思えない巨大な鍋を使って行う。多分給食のおばさんも得意分野だとおもう。今後は栄養価とかなんとか調整されていくだろうけれど、家が奪われた初日から栄養もへったくれもないのでそれこそ今回は大量調理の醍醐味、前回と違いたくさん作るからこそ、そうじゃないと出ない味のカレーを作る！他にも豚汁とかも代表的大量調理の範疇ではある。

「アオくん、カレーつくるから、何か嵐の及ばない拠点って作れない？正直いえば調理場作りたいんだけど」

「カレーですか。仕方ないですねえ、護衛業務内容につけておきますよ」

　そう言うとアオくんはきれいな赤色の魔石を空き地の４か所に置き、何かしらの魔力をこめてくれたところその石は浮き上がり、まあまあのサイズの雨除けができた。

　【無限フリースペース】からまず野菜を大量に出し、皮をむき、一時保管も場所がないのでまた【無限フリースペース】へ戻し置く。材料を切り終わったら、次はブロックを数個出し、組み合わせてかまどをつくる。そこから薪をくべ、着火剤にアオくんが魔法で火をつける。さすがに人目がありすぎてライターは使えなかった。