　一般的な夕飯の時間まであと少し。

　街の料理屋さんだった人たちも炊き出しゾーン作成に気づいたのか、私に声をかけてきた。

　炊き出しゾーンを増設し、他にも料理の下ごしらえができる手持無沙汰なメンバーがぞろぞろ来て、指示された食材の下ごしらえを始める。

　遠くでネルド国はより大きな炎をあげ、小さな竜が国の上空を旋回している。

「ドラゴンの厄災はこの世界どこの国にも伝わってはいて、みんな備えてはいたんだけど、実際に起きると、致し方無いにせよ結構ショックだね」

　大きな鶏肉ににんにくや玉ねぎ、ねぎを入れスープをとりながら料理屋さんがつぶやく。王族の方々もちゃんと脱出されているようだし、人的被害がなかったのは駐留していた冒険者さんのおかげだなあ。

　確かに、ランクCの冒険者さんたちは避難誘導によどみがなかった。

　きっとFランクではできることが少ないため、ランク開放によりマニュアルが支給されるんだろう。足をひっぱらないことが第一段階、できることをできるだけやるのが第二段階。

　要するに今、私にできることは、炊き出しだ。

「姉ちゃん、手際いいな！うちに来てほしいくらいだよ」

「私は家庭料理と炊き出しまでしかやったことがないんですけど、兄が料理人なんですよ～」

　実は、兄が家を出てからの料理は食べたことがないけど。

　「今日は私の故郷の料理つくるので、お口にあうといいんですが」

　それはたのしみだな～。と言ってくれているので、結構嬉しいし、期待に応えねば。

　とりあえずアイテムボックスいっぱいに食糧を入れてきたから当面は間に合うだろうし、王国の備蓄もまあまああるだろうし、移転後もなんとかなるだろ。そういいながら、鶏肉スープを仕上げていく。

　いつ来るかわからない厄災が生活に根付いていて、この国の人はたくましいな。

　今は凍結をしているからより力の強いモンスターこそ認知できず近寄ることができないナット王国はきっとこの厄災を回避している。しかもナットの護りがなくなったがためにドラゴンの厄災がおこったかのような状況。このあたりについてあとで魔女さんに聞いておこう。

　そして、今回の料理を作っている工程を見て気づいたのか、アオくんがキラキラした目で袖を引き、声をかけてきた。

　「チーズさん、今日のカレーって前と違うんですか？」

　サラダ油で豚肉を最初にいため、そこから次々具材を入れ炒め、水を入れ、煮始めた経過を見て、工程の差に気が付いたんだとおもう。良い観察眼デスネ。

　「今日は豚肉をつかった！中辛の！ルーカレーです！前と違う味だから楽しみにしてて」

　鬼教官はすっかりカレーの虜のようだ。かわいいので今度は豚汁つくってあげよう。

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