第101話 吉祥の白竜(8)
「え、アオとイオのなまえって魔女さんが『あいうえお』からつけたものだと思ってた。なんだ違ったんだ。」
すっとぼけたことを言うチーズさん、肩の力ががっつり抜ける。
単独でネルドから帰還したチーズさん、さすが異世界の君だけあって無傷。
「いや~追手があるだろうから魔法の痕跡絶対残しちゃだめだとおもって。いまのネルド、よくゲーム内のミニゲームにある、視界に入ったら即ゲームオーバー、相手の動きを見て迷宮を抜けろ!みたいな感じだった。視力強化スキルマジ神だった」
何気にスレスレじゃないか。教官としてもっと心配しておくんだった。ネルドの城門を抜けたあとは例のファットバイクで大疾走して帰ってきた、そうだ。さすが異世界の君、強運。あと、この兄妹何気に似ているようなきがするよ。無尽蔵な度胸。
「アオくんが『
「そうじゃな、ナットが貧困に窮して凍結魔法を行使してはみたが、どうも、おかしくなっているのはナットだけではなさそうだ。世界中がきな臭い。本当の名前は隠しておいた方が、後々問題が生じても対処のしようがあるだろう。ちなみにわたしはまだ、自分の名前を思い出してないぞ!」
そこに、
『俺、実は自分の名前わかってるんだよね。俺のステータスが前行った異世界準拠のままなんだけど、普通に本名書いてある。しかもこの名前公表すると芋づる式に妹の名前も想像がつくと思う。だから、妹が思い出すまで言わないことにする。』
『私は自分の名前、普通に知ってますよ~。ただ、アオくんイオくんのように自分でしっかり思い出すイベントを経ないと、うっかりナットの魔法が濃く残る地区に迷い込むと自我が弱いと名を奪われ、姿を奪われ、姿もモヤになるでしょうね。そもそものはなし、ここは認知できないようになっているのでそういう事故は起こりえないでしょうが。』
なにそれ、初耳というか呪いの域じゃないか。どういうことなんですか師匠。
結論、今現在名を失っているのは王と師匠、チーズさん。withナットの臣民たち。
『こちら
『チーズ殿、無事で何より。ドラゴンの厄災に単身乗り込むとかあなたは一体どんな度胸をお持ちなんですか。』
「いや~一番近くて、一番足がつかなくて、一番追われたときに他力本願で片付くかと思って」
てへ、じゃない。よく考えるとほんと、寒気がするようなことしているよ、狩猟民族チーズさん。
『そして、レイ様はいまどちらに』
はいきた、本題。ここが今一番困る事態がおきていた。
◇
レイたちの部屋には、
僕たちの部屋にはモニターを置いて観察できるようにしていたが、ウララさんには刺激が強いと思われるため、見せてはいない。
衰弱しきった竜達に、とりあえずは、微弱な回復魔法を継続的にかける。栄養状態が悪すぎたため本当は点滴もしたいところなのだが、あいにくドラゴンの皮膚を貫通するような針は持ち合わせていない。
目覚め魔法のおかげで目覚めたおかげか、辛うじて意識は保てているため、ぎりぎり重湯を経口摂取が可能となっているが、むせる。ただ、この病人食、
「あなた達はなぜ軟禁をされていたのでしょうか」
「一族のトラブルです。これ以上は、お答えしかねます」
レイさんは5メートル、お付きさん2体は4メートル、それぞれしわしわした竜となっている。本当に、しわしわ。
これぴんぴんパンパンの元気いっぱいになるのだろうか。
昨日ウララさんはモニター越しに顔をみて泣き崩れてそのまま寝てしまったので、実際こんなしわしわなことに気が付いているのか。心配しすぎて卒倒しやしないか。とりあえずは、モニター越しにする。直接会わせるのはもうすこし、回復してからにしないと。抱卵中と衰弱中、一緒にしては、いけない。
僕と
僕たちの心配をよそに、設置したモニター越しに、この2人は、穏やかな会話のみ。逆上としかしなくて、本当によかった。そしてレイさんは回復のために睡眠をとる。お付きの二人は、ぼんやりとした意識はあるようだが、全く覇気がなくて心配だ。
『昨日よりレイの顔色がよさそうだ。お前たちの尽力なのだろう?私たちは良い人間に拾われたようだ。』
「永長の回復魔法と、
さすが嫁、しわしわちゃんと見てた。
『私も抱卵中でなければ、人型となり生活をしていたのだが、我々の種族は産卵から孵化までの間、人型に化けることができなくなる。そこを今回は狙われて隣の部族にさらわれてしまい、このありさまさ。卵自体は私についてあるくために孵化するまでは盗むことは不可能。だからといって私ごと誘拐する暴挙を許すというのは私の属性、『吉祥』というものは難解よのう。そうまでして欲される。』
レイもきっと、私に巻き込まれたのだろう。あとで元気になったら、きちんときいてみようとおもう。そう、ウララさんは言った。
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