第285話 ボレイリョウ(4)
元気いっぱいすっきりしたと言った天くん、ほんとうにすがすがしい顔をしていた。これ、どんな大人になるんだろう。そして謎の宝珠。
「これって、ライムドラゴンからでる通常ドロップなのかな?鑑定が効かないなあ」
「こんなアイテムもドロップもオレも聞いたことない」
そう言うと双子はしばらく黙る。こういう時は大体ふたりで何かを相談していることが多い、と言う事を理解してきた。多分無意識で通信していると思う。
「ということで、チーズさん持ってて。その内使うこともあるかもしれないし」
「……このパターンって忘れるパターンじゃない?」
「その時は、その時。売るにしても出所が言いづらいものは売らない方が悪目立ちしないですし」
それはそうだけれど。
お腹はいっぱい、腹ごなしも完了。そして忘れてはいけない、ハギとフジへのおみやげハマボウフウ。書いてもらった手書きの地図では確かボレイリョウがこの先まだ北に2キロは続く。そこから徐々に砂浜の海岸となり、ハマボウフウがある、はず。
何に使いたいんだかわからないけど、私の分もちょっととっていって天ぷらでも作ろうかな。
通常であればハマボウフウは春の食べ物。いや、日本の話ではあるけれど。
今は一般的な季節でいえば秋から初冬。何であるんだこの国は。山林にいったらこれ、行者ニンニクもあるんじゃないの?!蕨やふき、タラの芽やコシアブラも…って山菜にまで気持ちがいく。日本に近い感じの植物分布だったら、あり得るんじゃないのこのオイスター。ハギとフジに後で聞いて見ようかな。
「チーズさん、何一人でブツブツいってるんですか?」
「今このオイスターで採れる食べれる植物のこと考えてた。口に出てた?」
「思い切り出てました。美味しい食べ物なら歓迎です!な!イオ、天」
「アオだけ抜け駆けしてるのはちょっと悔しかったですよ?」
「ぼくは、なにごとも経験~」
ボレイリョウのうえをザクザクと歩いている。しかしこんな広大な貝塚、どれだけの間、どれだけの人数が牡蠣を食べたんだろう。
そういえば、この世界の名前をしらない。日本でいう地球というか、このワールドの名前。この世界に来てからというものの、誰もその名前に触れようとしない、ということは、もしかしなくても凍結魔法で失われていたりする?変に聞いて変人扱いされてもややこしいので、心の中にとどめておくことにしよう。
おそらくはモヤ王、魔女さん、魔法使いさんのいずれかに聞かないとわからない気がする。
「そろそろ砂浜になってきましたよ!僕そのハマボウフウって見たことないんですよね」
「私の故郷では地域によっては絶滅危惧植物になってたよ。この世界だとどうだろう」
「僕たちは見たことがないので何ともいえないですが!」
「見たことがない時は鑑定、だよね、アオ」
「天はかしこいな~!!」
頭をぐしゃぐしゃと撫でられて兄そっくりの鳥竜は破顔する。とても穏やかでたいへんよろしい。そこから20分ほど歩いた先で、ハマボウフウを発見。私が見たことあるものと、寸分たがわないそれが、砂浜を埋め尽くしている。
◇
「こんな群生しているの、初めて見た」
「どのぐらいいるんでしょうね?ハギとフジ」
「この量が手つかずっていうことは、この国の人は食べないのか、何かに護られているかのどっちかかな」
「何かを採ったらモンスターが湧くって、この国の特性だったりしないよね…って出ないかもしれないけど」
「じゃあさっそく私が」
砂を丁寧によけ、根を残し採取する。
順調に5株ほど採取、その時その事件がおきた。
「……?」
牡蠣を採取したときとは全く違うプレッシャー。空が突然暗くなる。ちょっと上を見るのが怖い。目の前にぼちゃっと粘液が落ちる。そしてなんか、変わった匂いがする。正直なにがいるのかがわからず、上を見るのが怖い。
「あれ?これなんていったっけ。幼虫?あおむし?」
「これ蝶か蛾の幼虫だろ?詳しくないから名前まではわからないけど」
どうみても大きい気配しかしませんが。苦手ではないけど、巨大なのはちょっと勘弁願いたい。
「ねえ、結構大きいよね?」
「結構大きいですね、幼虫。苦手なんですか?」
「ちょっと、大きそうすぎて、見るのに勇気がいるだけ」
「じゃあ僕たちで片付けちゃいますね。通常モンスターだから、倒したらそのまま消滅しますよ。多分魔石ぐらいしか、残らないでしょう!」
そこから双子くんたち、何かしらの連携プレイで何かをした。私は見るのが得意ではなかったため、本当に気配が消えるまで、全く視界にいれなかった。剣と魔法の国とはいえ、影から計算しても3メートルを超える幼虫なんて、最初からいるな仕方ない。でも、改めて視認したくないんだ。
私が見えている範囲でいうと、ハマボウフウを保護したうえでバトル開始。なんやかんやして、植物のある場所よりボレイリョウに近い位置で爆音、その巨大な虫は消滅していた。
「チーズさん、もう立ち上がっていいですよ?」
アオくんが手を差し伸べてくれる。紳士か。
「結構手ごたえのない相手でしたね」
「……別に私、幼虫って青虫や毛虫が苦手なわけじゃないんだけど、今回は…その…のサイズ感がちょっと…」
「そうなんですね、そう言うことにしておきます」
「わかった!」
その後さっきのモンスターについてこの双子と竜の子、全く口にすることがなかった。重ね重ねも、紳士か!
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いつもお読みいただきありがとうございます。
最近仕事が年度末進行で修羅場っているため、2日に1度の更新ペースがやっとです。何とか保っていきたいと思っています。
投稿し始めてほぼ10か月(5月からなので)。
ブクマ、評価☆、いいね、とても励みになりますありがとうございます。
まだまだ続きますので、よろしくお付き合いください。
近況ノートかnoteでキャラ画のラフを順次あげていこうかとおもっています。そして茶白さんがクリンナップしたりリデザインしてくれるのを待とうかと思います(常に締め切りがあって大変そうなので苦肉の策)。
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