第73話 南国『アトル』(9)

 第2階層で必要なクエスト蒐集アイテムはすべてオンライン転送で納品を終え、順調に第3階層森林、第4階層砂漠とあゆみを進めた。ランクEのクエストは同一クエストを5回まで受けられることに途中で気づき、モンスターのポップアップ待ち時間が惜しいので、第1階層から第4階層まで周回、ランクDに到達するまでの50のクエスのうち、48までこなした。ガイドをみると、ここのボスは2匹同時出現の大きなトカゲと大きなカエルであり、その討伐クエストがランクアップクエストボードに出ているため、周回をそこで切り上げてボス戦をこなすと、そこでランクDの要件が達成できる。

 因みに★つきアイテムは、あの★3アイテム以降、全く出ていない。これなのに★10があるとか気が遠い話すぎる。


「そろそろボスいってもいいかな!」


 レベルもいいところ上がっていること、このタイムキープバッファーたちの切れない支援のためかすり傷すら負わずに、ただただ突き進んでいる。自分の能力じゃないパワーでチート体験してる件。


「サクッとDランクいっちゃいましょう」

「DからCの方がきっと楽ですよ、このパーティー編成でしたら。アオ様はみたところSランク相当とお見受けしますし、私たちもA級ですので」


 A級のシマエナガ。そりゃー過剰なバフもかかるってものだ。


「じゃあ、私に対するフォロー外れるのってまだまだ先ってことじゃない!」

「せめてBはないと経験値吸いますね」

「吸っちゃいますね」

「吸うね」


 そんなにも吸うか。

 

「で、ここが最下層への入り口です。武器の準備はいいですか?」


 私の手には守り刀。

 いろいろやってみた結果、この武器としては短刀がしっくりきた。私の狩猟スキルのおかげか、レベルが100になった時点でパッシブスキルに【刃:恒久】とかいうとんでもないものが浮かんできた。説明的には『使用する刃のつく武器全般において、耐久度の範囲内で切味劣化および、油、液体その他付着を防止し、腐食もしない』とか書いてあった。


 狩りのあとどんな刃を使用して血抜きをしたり、解体したりしても、私がその刃を持つ限り劣化しないとかいうとんでもスキルだった。私の手を離れた時点で保障はされなさそうだけれど。

 

 そして次階層への入り口だけれども、足元に蟻地獄のように下の階にむけて砂が落ちている。砂が落ち続けていてもまったく砂が減る様子がないのは、さすがダンジョンだといえる。

 安全のためういはアオくんが抱っこし、4人と一匹そろって下の階にむけて蟻地獄へダイブする。


 飛び込むと同時に流れ落ちていた砂はどこかに消え、足元にワープするような違和感を感じ、その後開けた石造りの空間に転送された。

 地面に着地すると同時に上からのプレッシャー。天井から地面までおおよそ8メートル、大体サイロと同じぐらい。その天井に張り付くトカゲが、こちらの姿を目視、完全にタゲられた。


 そう思ったとたん、横からの気配。視線を動かすや否や、5メートルはあるようなカエルが舌を伸ばしてきた。寸前のところで躱し、短刀で舌を切り落とそうとしたが、舌の半分ぐらいで私の腕のリーチが足りず切断まで至らず。血が飛散したと同時にカエルの体液が背中から天井近くまで発射され、それを浴びたカエルは完全回復する。


「ちょっと変ですよこれ!ガイドのカエルと名前が違う。レア種です!」


 アオくんがういを抱っこしたまま叫ぶ。

 ガイドブックに載っているここの階層のボスは「サキガケトカゲ」と「ストライプフロッグ」。


・サキガケトカゲ:体長2メートル。先制攻撃を仕掛けてくるが、躱せば壁に激突し気を失うのでとどめをさせ。

・ストライプフロッグ:体長3メートル、舌を伸ばして来たら切り落とし、大人しくなったところをとどめをさせ。


 と、あまりにも簡単な説明が書いてあり、私もそれを事前に一読していて、攻略方法に則り倒せるという認識だった。


 それがだ。トカゲは落ちてこない、カエルの舌は切り落とせない。


「アクシデントということで特別僕が分析、アナライズして共有します!」


 その言葉と同時に、目の前にVRのように分析結果が共有されてくる。


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 [ポイズンリザード(変異種)]レベル180

 通常のポイズンリザードは緑色、体長最高3メートルとなっているが、この個体は黄色、体長5メートル程度まで成長する。唾液、体液について毒性を帯び、唾液については溶解属性もついている。

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 [オイルフロッグ(変異種)]レベル180

 通常のオイルフロッグは黄土色、体長最高2メートルとなっているが、この個体は朱色、体長5メートル程度まで成長する。背中の噴射孔から吹き出す油は空気と触れることであらゆる傷を治療する治療薬となる。

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「何度もここでボスを倒していますが、別種かつ変異種が出るなんて見たことがありませんし、聞いたことがありません」


 そう、志摩が叫ぶ。


「チーズさん!いまレベルは…138ですね」

「そのとおり!」


 ポイズンリザードが天井から毒液を降らせてくるのを走ってよけながら、被弾したら困るのでういをハウスさせる。


「アオさん、私たちの支援で行けると思いますか?」

「まあ、大丈夫かとはおもいますけど、無傷かどうかはチーズさんの立ち振る舞い次第です」


 これまで4階層の間使ってやっとしっくり来た短刀だけど、このボスと私のレベルで戦うにはいくら切味が劣化しないとはいえ役不足感がある。


「いっそ鉄砲撃ってもいい?」

「跳弾したら怖いのでやめてください!そのうちレベルがあがったら跳弾防ぐなにかがあるらしいんですが、今は駄目です!」

「石礫じゃあ…だめだろうなあ!」


 やっぱりこの短刀で戦うしかないのか。どうやったら戦える?予想していた弱点よりもっと弱点がないレベルが高い敵と。しかもやっぱりこのフォロワーたちは支援はしても手を出す気はまったくなさそうだ。

 

「仕方がないですね。うっかり事故っるのも嫌ですし、僕が手を出したりあにさんを呼ぶほどでもないので、今回はレア種が出たということで、戦い方のアドバイスとバフに加えてデバフのサービスで手を打つことにします」

「ありがとう!アオくん」

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