第74話 アトル/道化の窟(5)
「まず、戦い方ですが、僕の視界を共有しますね」
VR画面が目の前に再び広がり、モンスターを注視するだけで弱点位置と、弱点属性が目視できた。なんなのこのアナライズ。自分のみどころか共有が可能なんて、一体レベルいくつ。アオくんはS級相当とかいっていたから、一体どれだけの修練を魔女さんのもとで積んできたんだろう。
アオくんから共有を受けたアナライズの結果、
[ポイズンリザード(変異種)]の弱点は氷属性魔法、眉間。
[オイルフロッグ(変異種)]の弱点は地属性魔法。弱点部位は背中の噴射口と舌。
私は氷は使えないから、地属性で挑むしかない。
いや、果たしてそうかな。
「僕の提案としては、まず、チーズさんが自分で持っている地属性魔法を駆使して、なんとかしてオイルフロッグを倒します。そこでレベルがおそらく180ぐらいまで上がるので、そうすればこちらの補助魔法の範囲ポイズンリザードに勝つことが可能となるかと」
「改めて知ったけど、アカウント1回でまとめてレベルアップじゃなくて、モンスター個別討伐由来でレベルがあがるのね」
「そうです」
「それはそうかもしれないけど、3人のうちだれか氷使える人いないの?」
「私が使えますが」と、永長。「いや、実力をつかって…」というアオくんを遮り、
「永長、こう、1センチぐらいの大きさで氷魔法の時限爆弾みたいなもの、2個、作れる?」そう、飛んでくる舌、そして毒を避けながら交渉する。
「1分ください」
「お願いします!」
もろ「凍らせて!」とか言わなかったせいか、アオくんは引き下がってくれた。かなり面白くない顔をしているにはしているが。
その間に地属性魔法で地面に土を盛り、でオイルフロッグの周りの足場を悪くし、染み出たオイルを土に吸収させ、機動力を落としていく。
「できました!」
「ありがとう!」
パスされたそれを受け取る。トカゲもカエルも変温動物。この個体もサラマンダーなわけではなく、自分で熱を発しているようには見えないからきっと、いける。
レベルがあがってるためにMPだけはあるのでボスフロア内のあちこちに土壁を作成、逃げ場と死角をつくる。
怒られるかもしれないけれど、君たちはしっかりレベルが高いし、ういは大事にハウスしてあるし、こんな変異種を最短で崩すには、この方法しか思いつかない。
油のしみついた土に足をとられ機動力が落ちたカエルの背中の噴出口に向かい、取り出したるは私の長銃ちゃん。
あきらかに周り3人がぎょっとしていることを後目に氷魔法の時限爆弾を【弾丸作成】でコーティング、カエルの後ろの土壁の足場に立ち、噴出口に向け1回発砲。その流れで再び土壁に隠れ天井に鎮座するトカゲの眉間に向けてもう一弾を発砲、いずれも命中。
その2つの【道化の窟】のダンジョンボスであったモノは撃ち抜かれた場所から全身が徐々に凍結、機能が停止する。トカゲに至っては停止と同時に天井から落下してきた。
いずれも弱点攻撃により絶命しているが、同時に銃と銃弾の性能から、大きな体のなかに弾がとどまり、瞬間冷凍のようになっている。
「チーズ様!びっくりするではないですか!」
「ごめんごめん志摩。でも、これが一番私のなかで勝率が高かったんだよね。そして永長、この魔法の持続時間は?」
「12時間です」
ながっ
「申し訳ないですが、魔法の解除は私の手を離れているためにできかねますので、ドロップ回収はそのあとになりますね。」
「チーズさん!今回は良かったですけど、ちゃんと防壁こちらも準備しておかないと危ないじゃないですか!」
「いやーごめんごめん。そのために土壁もいっぱい作ってみたんだけど!今度はちゃんと言うね!」
「くれぐれもほんとうに、お願いしますよ」
今回は短剣スキルを上げることを目的としていること、銃を使用する場合銃弾回避魔法をパーティー全体にかけておいて万が一を防ぎたいことを説説と語られるに至った。
なんだ、跳弾跳弾いわれたからすごく気にしていたけれど、ダンジョンでも銃、使ってもいいんじゃない。
とか思っていたのが顔にでていたらしく、より激しく鬼教官に叱られた。
◇
そのあと一息いて準備してきたコーン茶を飲み、その後カエルの油のしみついた土もひととおり回収。
とりあえず、ここに長居していても無駄になるので、時間が通常経過する倉庫を作りポイズンリザードとオイルフロッグを放り込み、ボスフロアをすっきりさせる。
そうすると地上へのワープゾーンがアクティブになり、光の柱が立ち上る。
「階層ボスではなく、ダンジョンボスの場合このようなワープゾーンが現れるのですが、基本ダンジョンボスへの入り口は片道となっていますので、どうしても勝てないときのためにダンジョンに入るときにもらった『出口戻りの魔石』がいるわけなんですよ」
「ダンジョンで命を落とすことはあるの?」
「先日遭遇したドラゴンの厄災に巻き込まれたり、実力差がありすぎた場合、戦闘不能により転送された先で治癒できるレベルの医療ギルドの人間が派遣されなかった場合、まあ、色々な要因が重なればあり得ますが、極力ないようにギルドを中心に安全策が組み立てられています」
「そのシステムを組み、中核をなしていたのが……………あれ?……なにを言おうとしていたんだっけ……」
アオくんが突然頭をかかえ、うずくまる。目を大きく開き、呼吸が荒い。
きゅ…救急車!と叫んじゃったけどここは世界が違った。
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