第99話 吉祥の白竜(6)
発見した人に化けた2人の竜は、往来での魔法行使は問題があると思ったのか、路地裏に回る。位置的にはチーズさんの自力ではいけない国、
ただし、師匠と魔法使いさんは、その所在を知っていた。北の方にある国。
打ち込んだマーキングははがされないようにカモフラージュ。親族の遺伝情報からの抽出になると、より精度があがるうえに、おそらくはこの2人、ウララさんの伴侶の居場所を知っている。かつ、師匠の違和感から鑑みるに今回のサーチで引っかからなかった原因を知っている。
さて、これをどうしたらよいものか。マーキングとスキャン情報を維持したまま、考える。
「ウララさんの伴侶の居場所を知るためには、この2人の遺伝情報から、たどる方がいいと思う。卵の弱い情報ではなく、親兄弟の縁だから、より強く情報が得られるよね。」
「師匠の凍結魔法ほどではないにせよ、何かしらの手段を用いて隠ぺい魔法が仕掛けられていて、それにオレたちはまんまと引っ掛かり、一番最初の時点で本人にたどりつくことが出来なかった。これはオレたちの力不足」
「そこを抜けてたどり着くための手段としては、ヒントの塊のような2人から情報を読み取る」
「僕はそういうえげえつない魔法持ってないよ」
「オレだってないよ」
『私はあるよ。少年たちにはまだ早い魔法だと思うし、リスクもあるからあまり使うことは推奨されないものでもあるし、今回は大切な■■の弟子たちに向けて、特別にデモンストレーションとして行使するから、見ておいて。』
突然の救国の魔法使いのカットイン。
同時に今まで卵から来ていた魔力のラインに大きな魔力が走り、僕たちの体を満たす。まず視力、そして体の状態も感じたことのないレベルでの活性化を自覚する。僕たちの体を媒介して一度増幅した後、今つながっているマーキング先へ魔力が走る。
……ザザ…ザ…ウララ…ザ…レイ…ザ……
ラジオのチューニングをするように、かの二人がしている思考の
『そうです!レイです私の伴侶の名は!』
かすかに傍受した念環から聞こえた情報にまず最初にウララさんが反応する。
……レイの奴、てこずらせてくれたな……父上、もう大丈夫ですよ。弟のいる場所は相手からは傍受不能です。こちらからの探索も順調、相手からのアクションをたどり、必ずや取り返しましょう。………依頼した鳥竜達はまとめてシラタマで消息を絶ったと聞きます……相手もなかなかの手練れのようだな………
『身震いがします。やはりこの親子が私をレイを引き裂いた。こいつらは、私とこの私とレイの子すら道具としかみていない。』
白竜から怒りのオーラを感じるが、爆発しないよう、志摩がなだめすかしている。
『どこにいるってしっかり言ってくれてもいいのに、なかなか言わないなあ。誘導するかな』
魔法使いさんからの【アスク】の念波が飛ぶ。これは一般的な竜種にはキツイ。無意識のうちに強制力が働き、質問にそれとなく答えてしまうという尋問スキルだ。この魔法使い穏便なようで全く穏やかじゃない。
……封印した……箱………収納袋………
『これ、伴侶クンこの息子のほうが封印して持ち歩いてるだろ、非人道的すぎるだろ。いや、竜だけど。』
『そりゃ探索魔法じゃ普通に生活している者が対象となるから検索対象外となって見つからないだろう。しかも近しい遺伝子のせいでジャミングが入る。どうやって引きはがすかな。アオ、イオ、マーキングはしっかり繋いどけ』
「もちろんです」
そこに師匠が登場する。魔法使いさんがいるのに、いいことになったのだろうか。
『仕方ないな、逆探知をいなして遊ぶのも飽きてきたから攻撃に出るか。情報をしっかり引き出してえらいぞお前たち。私がウララの旦那をたたき起こしてやろうか』
「■■様!そんなことが出来るのですか!」
『お前たち私の力を見誤りすぎじゃないのか。できるけどやらないだけじゃ。』
『さすが私が生涯愛する君!』
『お前はうるさい』
本当に魔法使いさんに対しては手厳しいよ師匠。
『座標を少しずらしたところにまずチーズを転送する。チーズは悟られないように気配を消して近くに待機。今回はアオとイオが主導して頑張ることがメインミッションであるから、お前たちの繋いでいるパスに向けて目覚めと脱出のコードを送るから、あっちの親子に対して同時に施してあるマーキングにそれを叩き込め。おそらく伴侶殿が封印されている収納袋を持っている息子だけではなく、父親にも同時に叩き込め。油断を誘わないとチーズに危険が及ぶ可能性がでてくるからのう。飛び出てきたところチーズはその対象をつかんでこっちに転移して戻ってこい。チーズは帰ってくることは自力でできるじゃろ。片道分の転移リソースはわたしが持とう。』
しかし人型なんだろうか、竜の姿なんだろうか。どっちだとおもうよ、しかも別の何かまで飛び出てきたらどうしような。とか言っている。どっちでしょうね。変なフラグ建てないでください師匠。
僕たちは杖をしっかり握りなおした。
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