第218話 密室ノ会・祈(11)
アオくんは一気にかつ一方的に話す、まるで講義。しかもホラー講談っぽい。
「では、続けますね。今回、師匠の凍結魔法と同時に王が呪いを受けたことが判明したのですが、その呪いがどこからきたのかが師匠は凍結魔法と同時に受けてしまったために波長のパターンがあいすぎて追跡不能、僕とイオでも力不足、要するに現状わからないんです。痕跡が薄くて、もしかすると条件発動かもしれなくて、探索はしてみたもののお手上げでした」
「そこでお手上げってことは手練れの術者なのかな」
そう、聞いて見たら魔法使いさん割って入ってきた。
「それについては、ものすごく強い術師の可能性と、命を対価として呪いの精度をあげる可能性の2パターンがあると思うんだけど、前者だと彼女が察知しないわけがないので、今回は時限発動かつ術師は生きていない可能性が高いね。しかも、時限発動は王に向かっていた、ということだね」
アオくんは頷きながら言葉を口にする。
「そうですね。王の呪いの元はわからなかったのですが、王が受けた呪いは致死の呪いだったのですが、姉がその大半を引き受けたために王は命拾いをした、というわけです。姉はこのまま呪いを解かずに目覚めるとおそらく命はないですし、王も呪いを解かない限りモヤ魔法を残しておかないと、うっかりアンデッドの可能性があって、ういくんに祓われちゃうかもしれません!想像してください、玉座に座るスケルトン!」
なんかどんどん語り口調がホラー通り越して探検番組みたいになってきたぞ。そこではここで問題です。みたいな。
「そもそもスケルトンの王を戴く国って亡国っぽいですよね」
一体何を言っているんだ何を。でも顔は一切笑ってないからやっぱり姉のことが心配なのだろう。その真剣な顔からもより一層、ホラーっぽさが拭い去れない。そしてこんな高レベルの人たちがしてやられた事件、なにか私に手伝えたり助けたりできることはあるのだろうか。
結局は、単純に復興して凍結魔法解除をするだけではすまなくなった、という意味ととらえた。
「もちろんと言うか、私もナットの異変には気にしていたんだ。彼女がいることを知っていたから、特段介入はしようとしなかったけどね。ここ300年で割と勤勉だった民族が突然得た地下資源であんなに労働を放り出すほど狂うと思うかい?栄えていた国が国力を削ぎ落されて、滅亡の一歩手前までいくと思うかい?王城近辺の人間が全員が全員そっちにふれるとか、さすがにないだろう!」
「俺は巻き込み事故でここにきたけど、確かにナットのありかたはいびつというか、何か干渉受けたのかなーぐらいにおもっていたんだけど。しかしこんな世界の中心みたいな国を追い詰めるとかあるのかな?と。しいて言えばクーデターの扇動みたいなんだけど、他国に対してそんなことする意味ってあるか?乗っ取り?ぐらいな認識だったな」
2人の分析はそうなんだ。
「結局王を暗殺して、ナットの系譜を途切れさせたいのが犯人の目的かな?」
「可能性としてはあるね。チーズももう少し成長したらこの世界のありようが、わかると思うよ。ナット王家、実は『ナット』ではないんだけど、あそこの国のありかたは王家のみの秘密みたいなことになってるけど、ある程度以上の魔力をもっていて、行使できるようになっていれば大体は察している」
「アオくんは?」
「僕もイオも知ってます」
なんだよ、急にくるじゃないか疎外感。
「こればかりは口にすると、どんなことが起こるかはわからない。過去に口にした人は非業の死を遂げた。だから、どんなに力をもっていたとしても、におわせですら制裁発動する可能性があって対処できないレベルだと困るから、みんな知っていても言葉にはしない。まあ、そう考えるとあの国の在り方自体が呪いみたいなものかな?そこでだ。アオくん、君は私に何を賛同してほしいのかそろそろ教えてくれないか?」
魔法使いの顔が真剣だ。なにか取引していたのかな?いや、即取引と考えるのも失礼か。
「1週間後、僕と一緒にナットに乗り込んで、呪いの痕跡の探索、手伝ってもらえませんか?いまイオを越える緻密な魔法を組むことが出来る人は僕はあなたしか知らないんです。世界の双璧の1柱に頼む、というか師匠への好意に甘えて依頼する、というのは本来であれば僕のプライドに反するんですけど、姉の命もかかってますし、背に腹はかえられないんです」
アオくんは魔法使いさんに対して最敬礼している。
「ねえユウ、どう思う?」
「これは転移で行かないで行くなら地上からだな。外から痕跡を探すしかないだろう。しかし、原因について凍結の魔女が探れないとなると、一体何によるんだろうな。なんか冒険めいてきて楽しいな!!!」
なんてことでしょう。兄の表情はとても明るい。
「ところで、なんで決行は1週間後なんだ?」
「それは、シラタマの図書館で本が借りれる期間が1週間あるんですよ!いま歴史まんがを借りていますが、この国発祥の魔法の成り立ちを理解して、魔法のプロセスも理解できてしまえば、魔法の分解理解ができるようなって身につくと思う訳ですよ」
「確かにね、賢い!」
兄は当然のように拍手をした。
そして後から思った。
私もしておけばよかった。
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