第219話 密室ノ会・祈(12)
あらかた説明を終えたのか、アオくんは一息ついた。
「そういえば、【神代】キノコダンジョンを出た後に師匠に先に言えと言われたことがあったことを思い出しました。特に必要とは思っていなくて言ってなかったんですけど、僕のルーツというか母親、シラタマ国出身なんです」
「え、じゃあシラタマに縁があったんだね。確かに、顔立ちが確かにこの国混ざってる系ではあるよね」
納得感がつよかった。同級生にいたイギリスと日本のハーフと似たような顔つきだなあ、とは思っていた。
「だからですかね、この国の人が何気に僕に優しいの」
「そうかもしれないし、アオくんがいい子だからかもしれない。わからないけど、良いことは好意的に受け取っておこう!」
「確かに!」
そこまで話したところで兄が口をはさむ。
「だから俺たちの弟扱いしてもまあまあ納得されるのか?」
「いや、それは8割ぐらいごり押しなきがする」
そう言ったら反論してきたのは天くんだった。
「ぼくとあおあお似てますよね!絶対似てますよね!」
涙目になって全力反論してきた。子どもの心理的には似てると言われていることが重要だったらしく、全力でごり押しが否定された。ちょっと焦った。
「そっくりですよね~!よく見てくださいチーズさん!」
アオくんは天くんの頭を撫でながら顔を横に並べて見せる。カバーの仕方もかわいいか。
「ごめん!よく見たら似てるね」
「もうちょっと気持ちをこめてください!」
駄目だしが入る。初手のしくじりを痛感。
◇
翌日、ミルクスタンドホッカイドウの営業時間、僕は勉強の時間と称して店の手伝いは免除、図書館へ行くことを良しとしてもらった。むしろ昨晩借りたまんが歴史書を完読するまで寝ないで読んでて怒られた。
ある程度歴史を頭に叩き込んだ今、試してみたいことがあった。
王宮の入り口でビジターパスを見せ、図書館に行きたいと伝える。すると、ビジターパスを発行してくれたオサムさんが迎えに来てくれた。
「こう、連日来てくれるとパスを発行した甲斐があるよ。これから1週間、出張の予定もないから、まあ、土日は休みだけど、好きに勉強してくれていいよ」
「ありがとうございます。昨日はシラタマの歴史まんがを借りました。大体頭にはいったので、今度は禁書にひっかからない魔術書とかを探してみようかと思います」
「君、魔力量多そうだもんなあ。よし、着いたよ。コウコ様、今日もよろしくお願いします」
そう声をかけると片手を挙げて反応してくれる。
「よ、少年。今日もようこそ」
「よろしくお願いします」
そこまで見届けるとオサムさんは「では、何かあったら連絡をください。よろしくお願いします」と言い、図書館を離れた。
「コウコさん、これからパスが有効な間、明日明後日の土日を除いてこちらに来て勉強させてもらおうかと思います」
「いいぞ、少年。学べ、学べ」
「そこでちょっとお願いがあるのですが、魔力を使った欲しい本の探知はここ、しても大丈夫でしょうか」
そう言うと、目を丸くして驚いてきて、僕もびっくりした。
「は?!出来るのそれ?!その歳で?!」
「できます。親の蔵書を読み漁っていた時結構な量があったので、欲しい本や読み返したい本をピックアップするのに僕も弟も使っていました」
「……天才か?」
そう言うと、眼鏡をかけなおす。お褒めの言葉は正直嬉しい。
「わかった。じゃあそれは最終日に使って良いと許可しよう。そこでヒットした本は私が責任もって持ち出し許可を出してあげよう。それまでは目と足でほしい本をピックアップして勉強するといい。当日持ち帰りたい本や、読み返したい本は帰りにまとめて言って。可能な図書に限り謄写してあげるから」
「ありがとうございます!」
ここから僕の読書生活は始まった。今まで読んだことある本とは違うアプローチで書かれている本、親の蔵書で読んだことがある作者の続編もあった。土日読書する分はちょっと多めに謄写してもらい、その後も時間が足りなくなるほど毎日入り浸り、いつぶりかわからないぐらい勉強した。この国の魔法について学び、昔流行った疫病についても勉強した。
この国では、約16年前疫病が流行るまでは魔力の保持量が多い人間が多く、一番扱える属性が多いのは炎魔法とのことだったが、疫病の流行が落ち着くと同時に、ばたりと魔力量が少ない子しか産まれなくなり、国力が落ちた、らしい。
そういえば僕もイオも、あの激昂事件が起きるまでそんなに魔法が扱えるとか思ったこともなかった、むしろ凡人以下という認識で生きていたな、ということをなんとなく思い出した。
もしかして魔力がないと思っている人たちも……まさか?と思いつつ、そのまさかがあったらこの国の力は随分大きくなるだろうな。
僕が担っているのはナットの復興の補助であって、シラタマの魔力減少の謎ではないけれど、疫病による魔力減少はサブクエストとしてやっておくのも悪くないかもしれない、とも思う。
そして、図書館勉強日の最終日を迎えた。
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