第153話 ミソノ山/偵察隊・増(4)
1体目を倒したところで特段何か次倒すものの指示らしいものは何も出現しなかったので、次に近い大物モンスターに向かうことになった。ういもそこそこ散歩したので一度ハウス。
「神聖魔法と光魔法というのは中々出現し難い属性なんですよ。うい、すごいですよね」
「ういも異世界の君のうちなのかのかもしれんのう。一番適性のあると判断されたチーズを召還したら、チーズの兄も、相棒のういも一緒についてきてそれぞれ、大きな役割と強さを持っている。わたしの手柄じゃな?」
とりあえず、役立たずと思われていないのが本当によかった。
「師匠、自画自賛すぎますよ~?この世界に転写されて頑張ってるのはチーズさんですよ?ういはチーズさんを護れれば世界なんてどこでもいいっていってますし、
「え、ういそんなこと思ってるの!嬉しすぎる!」
イオ君の言葉にびっくりするというか、イオくんも【動物言語】、レベル高いのかもしれない。
そして周囲は相変わらず森が続き、魔女さんの魔法による一撃ドロップ回収は続いている。しかも、その防護壁を破ってくるような強さの敵は全くいない。それともか、魔女さんの防護壁が強すぎるのか。
魔女さんとイオくんはこのダンジョンに向かうにあたり、色味違いかつお揃いでロングTシャツに軽いダウンベスト、下はトレッキングパンツ、靴はこの世界のトレッキングシューズのようなもので固めてきていて、目新しい服装になっている。
私はフッツーにオレンジのつなぎにトレッキングシューズ、アオくんは兄のおさがり山登りファッション。明らかに私だけ服装をしくじった感がある。別に登山服を持っていないわけじゃないけれど、こうなんか私以外がバチバチに決めていると、失敗感が溢れかえる。しかも着替える場所なんてものはない。
「このダンジョン、チーズの欲しいものが出るといいのう。銃ではなく、この山に立ち入った理由の方じゃが」
突然魔女さんが言う。唐突な。でも、欲しいものについて、語ってみる。
「欲しいものといえば、山に野良生えの葡萄、出来れば黒葡萄と山葡萄ですね…白葡萄は山のふもとで発見できてたんですけど…兄がミアカの方々のポテンシャルに気が付いてしまって、私にほぼ丸投げでワイン作りたいって言っていて。とはいえ、私も実のところ醸造実験したいので乗り気なんですよ。ワインとかジンとかウイスキーとか、つくりたいじゃないですか!」
「ワイン…それは、故郷の…酒か?」
「ワインは葡萄酒、ウイスキーとジンは蒸留酒ですね。こっちの世界にはありませんか?」
魔女さんが少し考えたような顔をして、「この国の酒といえば穀物とかサトウキビとかかのう?」と。サトウキビがあるならラム酒は造られているのか。穀物については日本酒・焼酎系なのか、ビール系なのかをちゃんとリサーチしなくては。
酒産業に参入していくにはリサーチはきっちりして、無いものまたは特徴が異なるもので攻めていかないと勝ち筋がない。
「ワインですが、今度上手く作ることできたら味見してくださいね。魔女さん見た感じ少女ですが、千年ランナーだから大丈夫ですよね?」
「それどういう意味としてとったらいいのかのう、のう?」
ちょっとしくじったがスルーする。
「まあ、白葡萄が発見できたのでまずはワインを試したくて。で、どうせやるなら別種のぶどうも使いたくて、白葡萄が自生していた場所の裏山を許可をもらって探しに入ったってわけですよ。」
魔女さんはその話を聞き、こちらを向きなおり、新たな情報をくれる。
「わたしも葡萄の自生地ならナットの国内外問わず、いくつか知っておるぞ?そのワインとやらに使えるかどうかはわからないが。基本この世界では葡萄はそのまま食す以外には何もしていない」
「干葡萄すらないんですか!美味しいのに!」
「食文化が葡萄の方に向かなかったんじゃろ。この世界は」
「じゃあ、味の先駆者になれますね。美味しいワイン造れるようにがんばりますよ~。他の葡萄の加工食品についても何もないのであれば勝ち筋が見えますね」
「楽しみにしてるぞ…っと。目的地にもうすぐつくぞ」
次の強敵スポットに到着。またもや何もいない。
「イオ、
「了解です、師匠」
先ほどのことがあるため、眼を凝らして空間の歪みを探すが、さっきほどわかりやすい歪みは見当たらない。ちゃんと四天王のうち最弱から倒している、ということだろうか。
私は空中戦であれば銃をだし、近接戦闘であれば短剣を使用していたが、さっきもらった【紅魔のハンマー】、もし使いこなせれば戦略が変わるかもしれないのですべて何時でも出せるようにスタンバイ。
「索敵完了です、現在大きな敵性反応なし。気配消してますが、本体は木の上で、位置を次々変えています」
「よしよし、慎重に読めるようになってきているな。」
その様子をみていたアオくんが、そっと私に対し話しかけてくる。
「イオを索敵とかで伸ばしたいんですかね?師匠。僕、なんか疎外感なんですけど」
「アオくんとイオくんってどっちかが覚えれば同期出来るとか言ってなかったっけ。あまり外での戦闘索敵経験のないイオくんに新たな経験積ませてあげてるんじゃないかなって思うんだけど」
「あっ…」
「アオくんは割と外で大立ち回りしてるから、滅多に外に出ないイオくんをコーチングしてるんじゃないかな、魔女さん」
顎に指をあて、アオくんは考えているような素振りのポーズをとる。
「いわれてみれば…僕いっつも外だから理解できてませんでした。でも、大立ち回りってなんですかチーズさん」
「そんな感じに見えるけど、鬼教官」
「そもそもその、鬼教官って言い方も前から言ってますけど、いい意味で使ってます?」
今度は手を腰に当てている。同じぐらいの身長だから割と迫力がある。そのうち派手に抜かれるんだろうなあ。なんてしょうもないことを考えてしまいつつ、質問には答える。
「いや、強くて頼りになる上にプロセスだけ教えて割とギリギリまで放置する、危なくなったらスマートにフォローに入る完璧なコーチングだなあっておもって。」
「それ、褒めてます?」
「とても」
「とてもですか」
アオくんはあまり納得していなさそう。でも人を教える才能はあるとおもうんだよな、スパルタだけど。
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