第152話 ミソノ山/偵察隊・増(3)

 ステルスモンスターの武器は巨大ハンマーらしい。目を凝らすと光の変調が見える。そもそもそれを扱っていいるモンスターは人型のよう。おおよそ3メートルの身長かつ体格は細身のマッチョっぽい。

 

「魔女さん!あれ、どういう仕組みですか。光学迷彩みたいなんですけど」

「こ…?なんじゃそれは」

「光の反射を使って風景に溶け込む技術みたいなもんです」

「なるほどな!ういの魔法が有用という判断がでたのは神聖魔法だけではなかったのじゃな。光魔法で打ち消せるなそれは多分」

 

 ういは私の足元でのんびり伏をしている。おそらく標的が双子になっているせいだとおもうけど、ういも男の子では、ある。

「油断している場合じゃないよ!あれ、見えなくなるの、消せる?」

 今言語を緊急習得中であることをアオくんに聞いていたので、ゆっくり丁寧に話しかけてみる。そうすると、あくびをしながらすくっと立ち上がる。犬のあくびはまいったなあとか、仕方ないなあみたいな時に起きる行動なので、何かやってくれるっぽい。

「アオくん、ういがなんか援護してくれるらしいよ~」

「さっき聞かれました、何をしたらいいかって。」


 横でういはふわっと大きくなる。戦う時に大きくなるのは小回りが利かなくはなるが、外力に対し強くなれるから、らしい。アオくんと練った作戦らしいんだけど、私はその点は動物言語のスキルレベルが乏しすぎて蚊帳の外だ。


 ういは私の横で、一声吠える。そうすると頭上から光が下りてくるというか、光の塊が天からその光学迷彩に向けて質量とパワーをもって打撃を打ち込むみたいな攻撃が行われた。

 その後も強弱をつけながら5度ほど吠えると天からの光の攻撃は強かにその敵を打ち付け、光の鎧をはぎ取り去った。そこまでいくとういは役割は終わったといいたげに小さく戻り、私の腕の中に飛び込む。

 

「ナイスうい、ありがとう!」

「チーズさんの犬、スッゲ」

「ういくんだよ、イオ。名前でよんで。」

「はーい」


 そういえば私はイオくんが畑魔法と索敵魔法を使うのはみたこことがあるが、戦っているのを見たことがない。と思ったら強そうな洋弓を取り出し、光学迷彩がはがれた巨人の利き腕の肩を打ち抜いた。少年の腕が引き絞ったとは思えない威力がそれにはあった。

 

「利き腕はつぶしたけどハンマーちょっとめんどくさいな。」

「こっちもハンマー使う?」

「俺は繊細な武器専門だからおまえがなー」

「はいはい繊細な腕をお持ちデスネ」

「あのクラスのハンマーならたぶんアオので砕ける」

「うっす」


 アオくんは収納から、ウォーハンマーを持ち出す。巨人の扱う武器よりもかなり小ぶりだが、ヘッドが30センチ程度、ハンドルは1メートル。金属の細工の美しさがすごい。今までアオくんは大剣が1度、他は大体長剣を使用していたイメージだったんだけど、ハンマーまで扱えるんだ。


「いきますよ~」

 そう言うとアオくんは踏み込み巨人のハンマーのヘッドあたりまで飛び上がり、横殴りで叩く。ガコン、キーンとすごい音がした後、瓦解するような音がし、ハンマーはただの棒になった。


「よっしゃ成功」

 双子はハイタッチしている。それと同時に武器を失った巨人はイオ君相手に殴りかかってくる。そうすると今度はアオくんが巨人の巨体をハンマーで横殴りに、そうすると20メートルぐらい周りの木をなぎ倒し吹っ飛んでいった。威力ヤバくないか?ついでにいうと細かくたくさんいたモンスターもまとめて吹っ飛ばした。


「あまり使わないからコントロール甘いなあ。」

 ハンマーをぶんぶんぶん回しながら余裕の表情のアオくん。鬼教官強いっす。

「さて、仕上げするか」

 イオくんは何かのデバフ魔法みたいなものを相手にかけると、動きが止まる。


「チーズさん、あとは好きにやっちゃってください」

「さくっと経験値にしちゃってください。ダメージ入ってるからおそらくチーズさんの適当な銃でも飛びますよ」


 半信半疑で予備の銃を【無限フリースペース】から出す。また雷魔法とか纏わせると銃ごと吹っ飛ぶのでそのまま撃つ。眉間めがけて5発を撃ち込んだところで、紅い巨体が揺らぎ、倒れる。

 倒れたところで、紅い魔石と、先ほどアオくんが破壊したハンマーの小型版みたいな武器がドロップした。

 勝手に鑑定してみると、【紅魔のハンマー(レア度:★★★★★)】と書いてある。

 

「これ、チーズさんいります?なんか打ったり殴ったりするのに楽ですよ。杭打つとか」

 アオくんがハンマーの絵を持ち、こちらに差し出してくる。

 

「え?レアドロップじゃないの?」

「僕にはこれがありますし。このハンマー近接戦闘に使ってもいいですけど、お勧めは農場整備です。柵とか打つとき割と強いので一発で杭が入りますよ」

「イオくん、いいの?」

「僕は使わないのでいいですよ。先ほども言ったように繊細な武器以外は使いません」

「じゃあ、ありがたく。って私、銃と短剣しか使う気がなかったけど、これ、いいね。」

 

 貰ったハンマーを持ってみると手にしっくりわりとはまる。こう長いものを持つと、野球のバットのように振り回してみたり、ゴルフのスイングの真似事そてみたりしたくなり、ぶんぶん振り回して遊んでいたら、双子には生暖かい視線を送られ、かなり魔女さんには引かれた。

 

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