第151話 ミソノ山/偵察隊・増(2)

 結論、アオくんとイオくんはものすごく頑張ったが、【転送魔方陣】は発見できていなかった。多少その系統の魔法には自信があった二人がべこべこに折れている。いっそかわいそかわいいの域に達している。


「お前たちにヒントを与えよう。【転送魔方陣】はギミックにより隠されている。そのギミックを発動しないと出現しない。さて、このフィールドで小さいモンスターは無数におるが、大きいのはいくつじゃ?」

「4体です」

「正解」

「師匠、もうサーチ終わってたんじゃないんですか?」

「さてな」

 魔女さんは満足げだ。


「では一番近い大きなモンスターのところに行こうではないか。あ、さっき言っていた足元が悪くても歩ける魔法、ういにかけるから出してもいいぞ」

「ほんとですか魔女さん!じゃあ遠慮なく!」


【無限フリースペース】のういのハウスより、久しぶりにうい登場。足元で嬉しそうに走り回ってる。

 

「さあ、イオ、なぜここでういを散歩させる必要があるかを答えよ」

「チーズさんのMPが雷魔法で枯渇したから回復?」

「50点!あともう一つはなんだとおもう。アオも協力してもいいぞ」

「大量にあった敵性反応は樹木や蔓だったし、なんだろう」

「地面の中にアンデッドが大量に埋まってるとか?」

「それならさすがに俺たちでも気が付くだろ」


 魔女さんは手をたたいてカウントをとりながら「さあ、どうじゃ。わかるかな!」とか言っている。

 ういが得意なのは光魔法、神聖魔法。となると、今回の樹木の敵の中に、ものすごく魔物というか魔族全開の属性持ちが混ざっているということだろうか。私が言うのは出過ぎたことにあなるなるので、ういをだきあげて様子を見る。


「ヒントはういの神聖魔法。はい考えて!」

「神聖魔法が特攻になるモンスターが居る、ってことですよね」

「さて、それはどんなモンスターじゃ?」

「……そこまではわかりません!ギブです!」


 ちょっと元気をなくしたイオくんを見つつ満足げな魔女さんは「まあ、当たればわかるぞ当たれば」と言う始末。なんだったんだこのクイズは。

「僕もまったくわからないや、そこまで気を付けて探索魔法使えってことですね」

「そうじゃよ~やり直しても別によかったんじゃが、時間が勿体ないからいくぞ!」


 4体の大きな魔物は東西南北に散り散りになっている。そして、このフロアは循環フロアではなく、四方に行き止まりがある。 索敵した4つの脅威を相手に順番に倒して回ることで次の【転送魔方陣】が出現する、というパターンが考えられるそうだ。

 

「4体倒す順番とかあったりしませんか?」

 

 疑問に思ったので聞いて見る。


「もし順番がある場合、不親切に順番を提示してこないことはダンジョンという性質上ないじゃろうな。もしかすると1体目を倒した時点で提示されることはあるかもしれないがやってみないとわからん」

「とりあえず、1体目、ですね」


 一番近い東側に向かい歩みを進める。このフィールドは本当に細かい敵がわらわらと出てくるが、魔女さんの魔法で全部キレイに私たちに当たる前に弾け飛び、落ちる。そしてすべて魔石になる。これさっきアオくんの魔法で見た。

 

「露払いじゃよ!大物相手にする前に消耗してる場合じゃないだろう?二度目の攻略とかで勝手がわかっていれば別じゃが、ここは楽しい初踏破ダンジョンだからな」


 魔女さんは本当に『未発見ダンジョン』が楽しくてたまらないらしく、本当に上機嫌だと思う。

 

「さっきまた銃壊しちゃったんですけど、魔法に耐えうる強い銃が欲しいですよ…」

「そもそも電流どころか雷乗せて撃ってる時点で耐久もあったもんじゃないじゃろ」

「やっぱりそうですかね…」


 でもやっぱり今の私が過大戦力として使うには、雷魔法が一番なんだよね、コントロールが銃を使うことでしかできないけど。さっきグリーンスターを作ったあの雷撃は魔力がすっからかんになるので、ほぼ暴発みたいなものだ。ういが居てよかった。

 

「銃はどこぞの主とかどこぞのボスとかのドロップで出るかもしれんが、そもそも銃のドロップというのが稀中の稀。それでもメイン武器は銃と短刀がいいんと言うんだから、なんとかするしかないの」

「メイン武器は銃で、短剣はそれで戦うというよりも、始末に使うのが主ですしね」

「高ランクモンスターじゃないと肉は残らないから、なかなか活躍の場が少ないの。頑張って精進しておくれ」

「モチロンですよ」

 

 今更杖です、長剣です、槍です、とはならないんだよなあ。主義信条の問題で。というか適性がある気がしない。


 そんなことでだらだら歩いて2キロ、目的地に到着。

「アオ、見えるか?」

「いや、今のところ見えない。索敵してみるか?」

 

 2人が杖を取り出し、構えた瞬間、上空から二人をめがけて見えない何かが落ちてきた。

「敵襲だ!」

「これステルス魔法か?!」


 しっかり左右に飛び、避けているのはすごい。さすが鬼教官とその弟(双子)。そしてそのなにかが落ちてきたところを私の眼を凝らして見ると、一部の空間がゆがんで見える。光学迷彩のような。ハンマー?


「またうら若き男児を狙う不届きものか~?」

「なにそれコワ。アオそんなのに遭遇したのか?」

「今度一緒にアトル連れてくから体験たらいい」

「えぇー…」


 アオくんはとても嫌なものを思い出すような、美少年台無しの顔をまたもや披露する。イオくんも情報を双子間で同期しているとは言っていたけどそこまで詳しいことはいかないんだね。

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