第150話 ミソノ山/偵察隊・増(1)

 グリーンスターは、とりあえず、魔女さんが持つことになった。万が一レッドスターとの共鳴とか面倒なことが起きそうになったときはすぐに対処をするということで。あわせて持つリスクより、分散させたことにより対処できなくなるリスクを避けると言う事だ。


「基本カラー持ちのバリエーションは赤・青・黄・緑の4色なんじゃよ。あと多分ブルースターとイエロースターがいるんじゃろうな」

「ブルースター…いやだなあ、僕に名前似てて。正直一生会いたくない」

「そう言うと、会うぞ~!」

「わかってますよ!」


 休憩も終了、グリーンスターも封印して仕舞ったということで、キャンプセットを片付け、ワームの向こう側にある【転送魔方陣】へ歩みを進める。魔女さんが突然来たおかげで、砂の上すら平面のように歩けるような支援をかけてくれて、なんか、楽すぎる。

 

「足元が悪い時の魔法、教えた事なかったのうそういえば」

「そもそも■■様、足元悪いところ行かないじゃないですか」

「お前たちが来る前はたまーに行ったりしたんじゃよ?」

「来る前って500年前とかいうんじゃないでしょうね」

「いや、もっと前」


 転送魔方陣の場所を特定して、みんなで手を繋いで入る。未知のダンジョンの場合、1つの転送魔方陣から別の場所に飛ばされるリスクについても取り扱い説明書もガイドもないので、できるだけそのリスクを減らすように努力はしてみる、というのが定石らしい。それでもなおバラバラになる転送魔方陣もあるそうなので、こればかりは、運。


 『せーの!』

 みんなでジャンプして飛び込む。魔女さんも付き合ってくれるわけじゃなくて普通に一緒にやってくれるから付き合いがいい。


 ◇


 次の転送先は、一面の森だった。山ではない、森だ。どのくらいの広さがあるかはわからないが、4人はバラバラになることなく、次の転送先に到着することができた。


「まさに、高ランクダンジョンじゃなあ。ここは先ほどの砂漠の数倍は広いぞ。次の【転送魔方陣】も探査レベルが低いとまったく見つけることもできず、さまよってうっかりすると命を落とす厄介ダンジョンじゃなあ。」


「そもそも、私みたいに木の根の隙間から落ちないとダンジョンに入れなかったってことですよね」


「落ちなかったらきっとただの山だったじゃろうなあ。わたし達は砂漠から合流したからのう。」


「山に入ったところで足元が木の根でいっぱいだったんですけど、その木の根の隙間からずるっと5メートルぐらい落ちました」


 その言葉に魔女さんも絶句していた。隙間から落ちた、とは言ってはいたが、5メートルとは言っていなかったし、空中を散歩するようなスキルを現状もちあわせていない私が、フリー落下したわけだから驚くのも無理はない。でも、あなたの弟子の魔法がないとアウトだったとは思いますが、結果無傷なので気にしなくていいのに。

 

「チーズさん、お前がついていながらその高さから落としたのかよアオ。」

「気づいたら隙間から落っこちてたんだから防ぎようなかったとおもうんだけど!」

「そこでさっきの足元が悪い時に使う魔法、だろ?」

「知らなかったし~」


 双子がじゃれあうように罵り合いだす。

 

「わかったわかった。あとで魔法式から教えるから喧嘩するな」

「よろしくお願いします、■■様」

 二人は声をそろえ、返事をする。良い弟子っぷりすぎる。やはりこの森フロアも帰還する魔方陣はない。


「そういえば新しい魔法といえば、さっき1フロア目で念動力をつかうモンスターに初遭遇、あとでイオにも同期しとくね」

「えっマジで!サンキュー」

「イオの研究、もう一段階進むかなこれで」

 

「魔女さん、アオくんとイオくんっていっつもあんな感じなんですか?」

「即喧嘩即仲直り即結託。まあ、一度魔力の暴発も起こしてるから、じゃれあうぐらいで適当に空気抜けたらいいじゃないか?」

 

 何気に怖いことを言っている。


「そしてお前たち、このフロアのサーチはちゃんと終わったか?なんでわたち達が転送した先で立ち止まったままか、わかっているのかのう?わたしはしないぞ。しかも、手落ち手抜きしくじりがあったら、わかっておるじゃろうな」

 

 双子のわちゃわちゃが止まる。そして2人そろって最敬礼。

「師匠がやってるとおもって遊んでました」

「気が付かなくてすみませんでしたっ」


 その様子を見て魔女さんは鼻で笑う。

「そんなのはわかっておったわい。とっととやれ、とっとと。」


 こんな美少女ビジュアルで鼻で笑うとかカッコヨサしかない。しかもちゃんと師匠している。そういえば私の師匠でもあるみたいなことを言っていたが、いつの間にか鬼教官アオくんの弟子みたいになってるから、孫弟子なのかもしれない。

 2人は背中合わせになり、杖をだす。そして、同時に杖が床を叩くと同時に魔力が走っていくのを軽く感じた。あとから聞いた話だと、魔女さんの迫力にビビったがために通常のサーチではなく、2人でしかできないうえに魔力コストが高い、事細かく、精度の高いサーチを行ったそうだ。


「終わりました■■様!思いのほかこの森は危険かもしれません」

「この森、先ほどとは変わって敵だらけ、戦闘経験を積むにはうってつけだけど、チーズさんには手厚いサポートが必要かと」


 魔女さんはにっこりわらって二人を見る。

「よくできました。でじゃ、転送魔方陣は、どこにある?」 

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