第91話 刻の庭『シラタマ』(15)
俺とノリが王から下賜される店舗と家を王の使いが案内してくれることになったため、ギルドを後にする。王は一刻先にドラゴンの解体で満足したらしく、すでに王城へ戻られた。
今回随行した
「この度は本当にありがとうございました。最後まで見届けられなかったのにお咎めがなかったのはひとえにお二人のおかげです。ありがとうございました」
深々と礼をしてくる。どちらかというと突然現れたS級とかいう素性の怪しい俺とノリに対するお目付け役だっただけなので、全く問題ないと思っている。未明がいないとそのまま立ち去ることさえ、やりはしないができたと思われていても仕方がない。
城門でギルド職員に手をふられ、目的地へ向かう。案内された先は大通りの真ん中、開けた公園沿いにそれはあった。
ぱっと見た感じ、木造建築40年。スコシボロイ。
「こちらが準備させていただいた土地と商店、家でございます。築年数から鑑みるに、リフォームをお勧めします」
やっぱりか~
今回の討伐報酬の追加としてドラゴン肉は1体だけもらい、他はすべてシラタマに納めた。
買い取り価格でこの店のリフォームをし、残りは開店資金としよう。妹はやっと冒険者ランクCに乗り、これから色んな事業に手を出していくだろう。どちらかというと妹が得意とするのは生産だ。妹が生産さえ安定させてくれれば、俺が小売り、飲食店経営等を行えば、復興資金の獲得は可能だろう。
そんなことを考えている横でノリはどうも家全体に魔力を走らせている。
「ユウ、ここが私たちの新しい拠点になるんですよね。ちょっといじっていいですか?」
「お前もしばらく住むし、自由にしていいよ」
「了解です。ところで、お店の名前、何にします? 」
「俺の故郷の名前を付けようと思うんだ。『北海道』」
「ホッカイドウ、であってる?」
「あってるあってる」
そう言うとノリは珍しく長い木の幹のような装飾が施された美しい杖を出し「増幅まではいらないんですが巧緻作業なので杖つかいま~す」とかいいながら、魔力を家に対して流す。すると見る見る使われている木材は美しく磨かれ、塵・汚れも綺麗になる。その時間、3分。
「私、これ得意なんですよ。店舗部分どうします?」
「とりあえず最初は牛乳屋さんからはじめたいんだよな。イオの負担もあるし。その後パン屋さんに発展させるぐらいでいきたいから、ショーケースを置いてバックヤードを広くとるぐらいがちょうどいいかな」
「あとでイメージ図、書いてもらったほうがいいですね。看板もつくりましょう~」
生乳の殺菌を行うための機械はないので、ここで加熱処理による殺菌消毒を行う。そのための場所、機能を作らなければならない。オーブンもなんだけど。
などとやっていたら、周りに物珍しいのかギャラリーが集まってきた。
「使いの方、あとはなんとかやっていきますので大丈夫です。家具等取りそろえるときに協力をお願いします。」
呆気にとらわれ口をあけていた王城から連れてきてくれた使いの人に声をかける。当の使いの人ははっと思い出したように「そうでした、今家の所有者の変更処理をするのでした!」と、店舗の入り口にギルド認証用のボードを置き、そこに俺の手のひらを乗せるように促す。手を乗せることにより認証、建物の移譲手続きが完了した。
「では、あとで落ち着きましたら家具の相談にいらしてくださいね」
そう言い、俺とノリのステータスボードに名刺のような挨拶状を送信し、頭を下げ、城へ帰還していった。名刺機能、これ便利だな。
店舗はノリの魔法でとてもきれいになっていた。
「救国の魔法使いと言われる所以なんですが、掃除・リフォーム・復元・維持などの魔法が得意なんですよね。だからこう、厄災とか戦乱の被害にあった土地に出向いて助けるという暇つぶしをしてたんですよね。平時にはあまりにも役にたたない能力なんですけど」
十分すごいだろ。しかも平時でも使えるだろ、十分。加えて外に連れて行けば支援魔法のエキスパート、攻撃もできるよ。って。自分を過小評価しすぎというか、興味が凍結の魔女にしかいってないのが問題というか。何気に残念な奴だな。
「個室利用できそうな大き目の部屋が2部屋あるので1部屋ずつ、でいいですよね」
「りょーかい!任せる」
実は家具は収納にもはいっている。だが、せっかくこの国で商売するわけだし、この国の家具を使ったほうが心象がよいし、俺たちも住みやすくなる。というわけで「明日家具を頼んで見に行こう」ということになり、今日の宿探しをする。
俺の異次元部屋を使ってもいいけれど、対外的には家具もない家であるため、怪しまれる行動を避けるためだ。
基本魔法やら収納やらフリースペースやら冒険者として上位ランク保持者であればあたりまえとなることでも、一般的には奇異に見えたり、羨望の対象となり問題となったりするので、極力同レベルの相手以外には手の内を公表しないほうが賢く生活できる。
過去、それで痛い目にあったことがあるんだ。あれは、本当に思い出したくもない。
「そういえば凍結の魔女は拠点が20あるとかいってたけど、お前はあるの?」
「私は1つの拠点だけ~。この世界で今起きていることは軽くリアルタイムでモニターを続けているし、昔諸国を漫遊していたことがあるおかげで主要都市は大体ワープ魔法が使用可能なので。ただ、今日からここをあわせて2つになったわけですが」
まじでか。
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