第90話 シラタマ/都・サクラ(1)

【実績解除】


 料理ギルドの判定基準は、一体なんだ。調理師免許か。それなら持っているが。

「ほう、なるほど。そうか、お前すでに免許皆伝クラスなのだな」

「免許皆伝?」

「正しく出店できるレベルの料理人ということだ。料理人ギルドは受験によるランクアップなのだが、すでにその技術をもつ貴殿は、免許皆伝の判定となったでしょう」

 料理人ギルドのおっさんが教えてくれた。この世界に来てからの料理をした履歴がざっと見れるといういらん機能がステータスボードにあるらしく、そこでギルド側が勝手に判定した形らしい。

「料理人ユウ、そちに免許皆伝を言い渡す」

 王こちらに向き、そのように言い放つとステータスボードに変化が現れ、


 料理人ギルド:免許皆伝


 と、表記されるようになった。これはたぶん先日の冒険者ギルド同様、この世界の人間にも見れるようになっているのだろう。

「ありがとうございます」

 そう言うと、こう返ってきた。

「これで、お前はこの国で商売が始められるな。安心して準備をした店舗を報酬として渡すことができる」


 この王は俺の無茶な要望について、しっかり考え、準備していてくれたらしい。

「私はここからおいそれと出ることができないが、後ほど侍従に紹介させる。それはそうとして、この竜種、お主は解体することは可能か?」

「解体可能です」

 王はにっこりと笑い、こう続ける。

「この国のお抱え解体スキル持ちは竜種を解体した経験がなくてな。手本を見せてほしい。報酬はお前が必要な量、竜をもっていくといい。必要外の分は買い取りとし、その分でそちが展開する店舗の開店資金としよう」

「わかりました、よろしくお願いします。」


 ◆


 ギャラリーが見守る中、解体ショーが始まる。ギャラリーで来た中には血肉が苦手な人もいたため、退避してもらってから開始となる。収納から俺の前の世界で大量ドロップしたドラゴンスレイヤーを研磨して作った、解体包丁だ。因みに切味が落ちない加工もしてあり、豪奢な装飾はすべて落としてあり、大きな包丁のような見た目となっている。アイテム名も「龍襲刀りゅうしゅうとう」と名が変わっていて、元が何だかわからないようにはしてあるのでうっかり鑑定されても大丈夫だ。そもそも異世界産で読めないかもしれないが。

「瓶か甕を用意してもらえますか、血抜きをするので」

 そう言うとまず首を落とし、そこから出た血を俺の得意魔法の一つである水魔法の派生技術で抜き取る。きれいに血抜きができると肉の味が保たれるために丁寧に、丁寧に行い、完了させる。そして、抜き取った血は準備してもらった容器に移す。

 そして、今回は鳥竜種なので鳥の解体に近い。多少皮は固いものの、この刀があればサクサクとことは進む。

 

 大体20分前後、1体分の解体を終え、終了。ドラゴンの血は一滴すら無駄にはできないため流体操作で返り血もすべて回収する。

「こんな感じです。いかがでしょうか」


 ギャラリーの皆さんは息をつめて見ていたらしく、大きなため息が聞こえる。

 王は手をたたき、讃えてくる。

「あざやかじゃのう。ゆかいゆかい。」

 そしておずおずと、料理ギルド長が質問をしてくる。 

「ありがとうございました。大変勉強になりました。ところでその解体に使用している刀はどのような由来のもので」

 はい、予定していた質問いただきました。

「これは『りゅうしゅうとう』という、竜種解体に特化した刀です。私はよく竜種とも対峙するため、その後の処理のため作成いただいたものです。複数本所持していますので、1本お分けしましょうか?」

 

 この刀の出自はこの世界のものではない強固なガード魔法をかけてあるうえに、どこのものであるか、どのような成り立ちで作成さたものかという解析パターンが全く読めないように作成されているので、渡してもまったく問題ない。この世界にドラゴンスレイヤーも研磨技術もあるかはわからないが、どちらかというと魔法優先の世界となっているようなのでオーバーテクノロジーの産物になっている可能性が高い。

「そんな貴重なものをくださるのですか?」

 料理人ギルド長はものすごく緊張している。

「いいですよ、この数を解体するのは骨が折れるでしょう。私は一人で行いましたが、水または流体魔法が得意な者と、剣技が得意な者が組んで作業をすると仕事が早くなるかと思われますよ」


 刀を鞘に納め、ギルド長に渡すと、抱きしめていた。そんなにか。

「この量出しっぱなしにしていると鮮度が落ちてしまうので、一度収納にいれますね。出すときは1体ずつ出して、解体してみてください。もし希望があれば立ち会ってレクチャーもできますので声をかけてください」

 収納袋に一気に突っ込み、これもまた渡す。

「ぜひ、よろしくお願いします!正直、手際が良すぎて早すぎて、わからないところが…」

 あれ?これでも鮮度を落とさないゆっくりやったはずだったのに。マジでか。

 

「もしよかったら録画あげますよ~」

 後ろでヒマしていたと思われたノリが声をあげる。映像魔石で俺の解体ショーの映像をとっていたらしい。しかもマルチアングルで。

 親友候補生、マジで有能だった。


 その後1体解体実習の監督をし、一応のレクチャーは完了した。

 ちなみに、解体隊、抑える隊、魔法隊あわせて6人チームでやっとなうえに、時間も40分かかっていた。

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