第270話 ユガミガハラ(5)

 モニターに映し出されたのは、チーズさんがネルドで撒いたと思われた、ウララさんの誘拐犯である2体の竜ウララさんの義父と義兄、もっと具体的に言うとレイさんの父親と兄弟の人間体であった。こんなの、本当に天くんに見せたくないものナンバーワンすぎる。


『間違いないよな、完全に』

『あの個体2体、チーズさんが完全に撒くことに成功したけど、生き延びることはできたんだ』

『結局最後まで追ってなかったからな』

『で、何やってるんだこの人たち。シラタマ王となにか言い争ってるけど…音声は拾えないか』

『拾うか?いいぞ。新たな魔法式を足してやろう』


 そう言うとハギがまた重ねがけをする。この魔法、原型がないほどに重ねがけされまくってまるで魔改造探査魔法になっていてむちゃくちゃこわい。違法建築探査魔法。絶妙なバランスで成り立っているからこれ、2回目はまずないと思うし、類似の事をやろうとしたら別魔法になりそうでもある。

 とか考えていたら、拡大された画面に連動した音声が頭の中に流れてきた。

  

[シラタマ王、お前の差し金だよな?お前の国で起きた沙汰だしな]

[何の事じゃ、何度も言うが知らぬわ。早く解放しないとそなたの命は保障せんぞ]

[人の子だというのに、王と言ってもなんだ。竜種にかなう訳もないだろうしな]

[お前の国の山…確か鳳鳴山ほうめいさんといったか、そこで起きた事件だ。覚えてないとは言わせないぞ!]

[だから知らぬわ!お前たちは何をしたいというのだ]


 あれ、これってもしかしてあにさんの「竜種に占領された山狩り☆結果ウララさん救出事件」のことかもしれない。さすが王、失言をしないプロ。確かにこの人たち山にはいなかったし、指示出してレイさん攫ってただけだし、王、はなはだ関係ないといえば関係ない。

 拉致されていると思われる場所は地下室っぽいけれど、牢ではなさそう。それにしても一国の王を案内するには適さない場所、と言う事よりこの場所が提供されているということはこの鳥竜と[オイスター王家]が何かまではわからないが、共謀している可能性がある。


[『吉祥の白竜』を返してもらおう]

 

 その言葉を聞いて、4人そろって天の方を向く。天はびっくりした顔をしたが、頭を振る。


『これってぼくのことじゃないよね、母様のこと?母様にこの人たち何したの?』


 険しめの声を出す天。もうこんな声を出すほどの成長をしたんだ、と思いつつもどこまで説明したらよいものか悩む。刺激の強いことはウララさん然り、あにさん然り、保護者の前で言いたい。ただ、うっかりするとこの子竜は現地に無鉄砲にも聞きにいきかねない。


『悪いイオ、ちょっと魔力の維持はするからコントロール任せていいか?あにさんに連絡する』

『わかった。一秒でも早く終わらせろよ』

『ありがとう』


 杖の状態を維持しつつ、収納から直通通信アイテムを出し通信を開始する。


あにさん、犯人がわかりました」

『さすが現地。探査魔法、なかなかの仕上がりだろ?』

「いまそこから魔法が重ねがけされすぎて原型が大体あやしくなってます。解析とかできます?」

『あ、ノリが今横できいててやるって言ってる』

「犯人ですが、チーズさんがネルドで撒いたあの2人です」

『は?!』


 あにさんが驚くのもわかる。


あにさんが解放したものを求めていますが、きっちりいま匿われているのでそちらは大丈夫ですが、交渉材料またはシラタマに匿われていると判断したのか、シラタマ王が巻き添えになったかたちです」

『葬儀中にやることかそれ?!いや、警備は薄かったかもしれないが……』

「何をどうしたのか、王城地下に囚われているので協力関係にもありそうなんですよ。どうしたらよいのか……乗り込んでもいいですか?!」

「そういえばチーズは?」

「寝ています。ういも心配していないので、大丈夫です」


 これが精いっぱいの偽装連絡。


『……よし、じゃあ、俺とノリが乗り込んで一気に片付けるか。魔法の編纂作業に集中したくもあるけれど、恩義あるシラタマの一大事だしな。……ノリがそっちで展開してる魔法の同定に成功した。場所の特定も済んでいるし、コントロールはあとはこっちでするから、魔力の供給だけ頼むって』

「わかりました。イオ、魔法のコントロール権が救国の魔法使いに移った。僕たちは魔力供給を持続するようにって」

「おーけーおーけー」


 軽い返事が返ってくる。それと同時に険しい表情が視界に入る。それはそうだろう。


『あおあおがユウ兄ちゃんに聞いてたことってぼくに言えないこと?』

『……あまり知らない方がいいことだとおもう。ウララさんかあにさんから聞いたほうがいいとはおもうけれど、許可があれば僕が話せなくもないけど』

『あまり良いことではないんだね?』

『まったく良くないことだよ』


 さっき演舞をしたせいだろうか、天くんの魔力というよりも神気がいつも以上にあがっていっているのがわかる。加えて怒りの感情のようなものが感じられる。ダメだこれ、ごまかしがきかない、どうしよう。あにさんに任せても良いだろうか。

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