第236話 密室ノ会・祈(29)
シンプルに言えば、今回はこの凍結魔法と同時に起きた事件について、ある程度の把握ができることができた、それだけだった。魔法の強度が強すぎて世界の双璧の力をもってしても、リスクが高いという結論に至った。
この実力者をもってそう言わせるとは「ベニトビ」の実力は測りしれない、と思った。
「あまりそういう強すぎるものに興味を持ちすぎちゃだめだからな。適度に接しろ。お前はまだ若いからな、わかっていたとしても、うっかりがあり得る。危なくなったら大人が全力で引きはがすけど『こういう考え方もあるよね』といったように常に他人事でいけ、当事者になるな。それが特殊な力との付き合いかただからな。肝に銘じておくようにな」
師匠からの今回の事についての注意はそんな感じだった。
この呪いについて分析の結果、そんなに性急にどうこうなるものでもなく、ナット国が完全復活を遂げる時までにどうにかしておけばいい、ぐらいのレベルではあるらしいのだけど、いくら時間が止まっているにしろ致死性の呪いに姉をさらし続けていることは気持ち的に全くよろしくない。
実働部隊としてミルクスタンドチームがレベルアップをしつつ分析・解明を目指し、随時イオに情報共有。
ただ、中途半端にいじるともっと被害が増えそうなこと、大本の話、師匠にかかってる呪いが終わってるのか続いているのかについても検証しなくてはいけない。さすが天才だけあって、呪いの発生源を検証する以外には、簡単に読み解けない。僕やイオの力では完全に力不足、ノリさんの力をもってしても完全解析は叶わず、残留思念に対するさらなる刺激にすらなりかねない。
100年も前になにしてくれたんだ、この人は。と思いつつ、勝手に想われて勝手に被害にあった師匠がちょっと不憫でもあったりする。いや、そもそも師匠が逃亡してなければあるいは……考えるのは無駄だな。とか思っていたら今度はシンさんが出勤してきた。
◇
「昨日から何かこそこそされてますよね。一体何をされてるかはわかりませんが、王が突然昔みたいに堂々とされたので、きっと何かいいことだったのでしょうね。気が向いたら教えてください」
「私の想い人を思い出した、それだけだよ」
「ああ、
今だけは王の表情が読めなくてよかった、と思う。そんなにすごかったのか。
「そういえば弟くんたちは姿を保ってここにいるのに、氷那さん、どこいってしまったのでしょうね。まあ、今の王の姿をみたら卒倒してしまうかもしれないですけどね!」
「氷那のことは、あとでわかると思う。そして、凍結魔法の弊害で姿を失っている以外にも、私自身が別ルートで呪われていたことが判明した。それを解かなくてはいかなくなったということ」
「え?!世界の双璧をもってしても手に余るなんてことがあるんですね」
王が鷹揚に話してくれていると言うのに、ものすごく、シンさんの言葉にはとげを感じる。
「すまんな、お前の大事な人を健全な状態に戻すには時間がかかる」
「今の王とマンツーマン状態、楽しいので別にいいですが、ちゃんともとに戻してくださるのであれば」
「いやな、私が直接呪ったわけじゃないんだからな?!わかってるかそこ?!」
「わかっていますえど、王宮魔導士としてちょっと残念って思っただけなので他意はありません」
人生の先輩に言うのもなんだけど、この文官、言葉がとっても巧み。そもそものところ、師匠の落ち度については申し開きのしようもない、と本人も思っていそうなのでこれ以上突っ込んでくれるな、とも思う。
「まあ、それについてはわたしのこれからのリカバリー
あ、師匠開き直ってた。そして、今ここにいても新たに何かできることはなにもない。動かなくては。
「これから僕とノリさんは一度シラタマに戻って、実力アップを図りつつ、方策を考えます。情報は常にイオを通じて個人レベルを含め共有しますが、必要に応じて通信等は行いますね」
「あーちゃんの手落ちを私がカバーして印象アップ作戦!というわけだね!」
その言葉に今にも手があがりそうな師匠をイオがおさえていた。悪い。
「……今日の朝ごはんは、
今朝の朝食は「フル・ブレックファスト」らしい。料理の修業中立ち寄った国の朝食のミックスらしい。もう、見た感じからものすごい量。
薄切りのトーストと目玉焼き、焼きトマトにソテーしたマッシュルーム、ソーセージにブラッドソーセージ、ベーコンそして芋がもりもりに盛られている。紅茶とマーマレードジャムもある。「食べ盛りだしたくさん食べろ!俺のつくる自家製ハムはうまいぞ!」とか言っていた。が、これ、ソーセージはあるけどハムないよね?
味は多少癖があるものはあったものの、総じて期待を裏切らず美味しかった。
お腹がいっぱいになったところで解散。
ノリさんは師匠に対して名残惜しそうだったけど、前よりましな対応に満足していたのか、思いのほか駄々をこねなかった。
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