第111話 ナット/食糧難からの脱出(7)

 西の離れの横の畑がとりあえず、完成した。王城の敷地内に大きな畑があるというのはなかなかシュールな光景ではあるけれど、有事の際の食料の有無は本当に死活問題だから、ひとまず景観は目を瞑ってもらおう。最悪この国がきちんと再建できた場合、魔女さんに別の場所に転移してもらってもよいわけだし。先に言ってもいいぐらい、魔女さんありがとう!


 一番西の離れに近いところにある10メートル×10メートルの小さな区画については、緊急育成用に土づくりをしたうえで休眠させておくことに。ここは、私がいて、イオくんがいるときに突発的に欲しい食材のために活躍する区画ということにした。


「ナットの気候って、季節の変化というほどのものではないんでしょ」

「全くないわけではないんですけど、ほぼないようなもんです」

「そのうち温度管理とかでどうにかするかもしれないけれど、最初は考えない方がやりやすいよね。簡単なレベルからこつこつ積み上げないと破綻しちゃう」


 今日は、ラッキーなことから新しい種が手にはいったため、畑を区画分けしたうえで、昨晩発芽させて準備しておいた苗を植えていくことにした。今回作成した畑は東京ドーム1個分、そこまでは大きくはないけれど、この人数が食べていくのには全く問題がないし、産業の足掛かりとしてはまあ、不足はない状態。また、まとまった数があればミアカ村にも定期的に行商を行うことができる。というかそろそろ、ミアカへの給与の支給と、行商計画も立てなくては。

 

 「兄さんのジャガイモ畑とここの芋は品種が違うから別々に育成しているから、畑別れちゃってるね」

「チーズさんのところの家庭菜園は鶏さんもいることですし、そのまま続けた方が良いですよ絶対。」

「土の作られ方も結構違うしね」

 うちの土地は、自分のところでも作ってはいるけど、近所のみんなも手伝って作ってくれていたから、結構いい土なんだよね。この先は自分でやっていかなきゃいけないけど、きっとどうにかなる。


 「チーズ!人員を再度振り分けてしてみたぞ」

 

 ウララ様お世話係8人は固定、他の12名については魔女さんに適性を見直してもらった。土いじりチームのケイ、ソウ、アヤも、畑づくりが終わってしまったので、それぞれの適性にあわせて新たな仕事を振られることに。


 チーム食堂には、ウララさんチームのうちの2名と、ケイともう一人女性の計4名。ケイは力パラメーターが高く、過去やったこともあったため、食肉加工チームにも名を連ねることに。

 畑仕事といっても四六時中見張っているわけではないので、12名で畑管理チーム・狩猟チーム・一部チーム食堂を編成、適性にあわせて仕事を振り分け、タスクは1つだけではなく、マルチタスクを基本とする。


 もともと、西の離れは職員食堂と、城の管理清掃が主な業務であったとのことから、清掃部分だけを考えても王城清掃管理分の仕事が丸ごと浮いている状態である。


「僕のやっている仕事について説明しますね。水管理は2人交代で、その他の用務は1人1役割で数日に1度行えば大体まわせるとおもうので、適性を持っている職員それぞれ、覚えられる範囲のタスクを覚えてください。あとは、メンバーの中で回してもらえれば、良いかと思います。熟練してきたらチーズさんの【時魔法】の補助もできるようになって、やりがいもお給料も増してくるかとおもいますので、宜しく覚えてください。」

 イオくんが、ざっと説明をする。

 それに対し、「はい」「はーい」「了解です」と口々に、返事がある。やっぱりしっかりしすぎているせいか、年齢不相応に思われているとしかおもえない。


 「チーズに目を通してもらっていると、いかにこの国が適当にやってきたかわかって結構頭が痛い。多分王もそう思っている。」

 本当に使い込んだ民と、最近知ったというか、やっぱり居た、としか言えない政治的によろしくない采配をした王の側近幹部が現状復活していないので、そこをどうするかもかなり頭が痛い。が、とりあえずは後回し、後回し。

 

 給料については、まだざっくりとしか決めてはいないが、やりがい搾取みたいなことは絶対に避けたいので、当面はウララさんから譲渡されたの宝物というか呪物の売却で対応、その後はちゃんと貿易により収益を上げていきたい。いくらあの呪物があるとはいえ、20人分の雇用。うっかりすると消費しかねないので、早急に対応を考えなければならない。

 

 収益を上げた分についても各国に専用口座を作って対応。収支決算は求められるであろうから、帳簿もしっかりとつける。ただ問題があって、パソコンでやろうにも、ネットワークが繋がっていないので表計算ソフトが使えず、まさかのアナログ手計算が想像される。それも今後考えよう。


 そして、新たに作られた畑の前に役割分担を改めて指示され、並ぶ12人。

 「さて皆さん、苗は私が作ってきましたので、今日は定植作業を行います!イオくんからの農業魔法指導もありますので、あわせてしっかり勉強して、今後に活かしていってください。今この国の状況について皆さんすっきりしないところがあると思います。ですが、無理に思い出そうとせず、今できることを1つずつ行っていけば、いつの間にかすべて思い出して元通りになるように私も頑張りますので、みんなで力を合わせてやっていきましょう!」


 そう言い終えると、拍手をもらってしまった。ありがたいやらはずかしいやら。


 「では!今日の役割分担をお伝えします!」

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