第201話 秘境イノハナ・白妙(4)
「ダンジョン職人が作ったダンジョンは、自然成長したり、特殊事象を起こしたりということもある。伝説の職人、今もいるような噂だけは聞く。あとな、ダンジョン職人になりたい素人がつくった落とし穴みたいなダンジョンもたまにあるぞ」
「落とし穴、酷い言い様…」
「それもこんど見つけられるといいな!ある意味面白いぞ。まだお前たちは15歳で、王族と割と近い位置にいるから、職人を偶然見つけることもあるかもしれんし、復興が終わった後に王に呼んでもらうとか、そういう方法もあるかもしれんな。お前たちがきてから大体4年か、まだまだチャンスはいっぱいあるぞ。まあ、200年はゆうにわたしは会ってないが。一番有名どころだと、一子相伝だし4代ぐらいかわってそうだな…」
あ、これわかった。師匠、【自然発生】に引き続いて【神代】ダンジョン引いてテンション上がってるんだ。
『師匠、楽しそうだな』
『レア未踏破ダンジョン、立て続けに2つだもんね、わからなくもないし、僕も楽しい』
『実はオレも』
「じゃあ、目印も立ててあるので探査するか、イオ」
「杖でいっか」
「ウララ旦那探索のときのアレな」
収納から杖を出し、地面に突き立てる。前の時はまだ名前を思い出す前だったからか、今『
「師匠、これ、何ですか」
「ん~?いつも私が視ている世界に結構近いかもな?あ、凍結魔法使う前ではなく、今、な」
「マジで」
万全ではない状態でもこんな万能感にあふれるような体感をしていて、ここまで平常心を保っているのか師匠は。世界の双璧とはここまで凄いものだったんだ。なんかめっちゃっすごいけどうかつで面白い師匠ぐらいの認識でいたのが大誤認だったんだと、アオと共に今更ではあるが認識を新たにする。
「なんだなんだ~?師匠様の凄さに今更気づいたか?」
「今更気づきました」
アオの正直さよ。でも、オレもしっかり頷く。
「はっはっは、弟子が酷い。でも正直で結構。で、何に気づいた?」
「師匠が言ってたとおり、閃閃と閃電はダンジョン主の誘惑に打ち勝つぐらい、現主としている天くんに対する信望が強すぎて、想い出といってもダンジョンに囚われてから天くんと会うまでの再生をしているだけなので本当に天くんの一声で目覚めますね」
「永長は結構深くキノコのダンジョン主と繋がってしまっているから、慎重に引きはがすしかない」
「いっそノナを呼んで正気に戻して引きはがす」
「いや、でもこうなった原因が寿命のくだりだろ?ただいまどう話かけても繋がらないだろ」
「じゃあ志摩から声かけてもらう」
「志摩っていま、アトルで1人で頑張ってるよな……師匠、志摩に声かけられますか?」
■■様はニヤニヤしながら、答えてくれる。
「そりゃそうよ、使い魔だからな。ただ、私から永長はだめだったな。志摩からは双子通信があるから使い魔契約よりつよい血の通信だからな、いける」
「じゃあ、弟子たちの助言に則りわたしから志摩に声かけてみるか~…………」
そこで師匠が通信に入ってしまったので、オレたちの足場まわりをアオがキレイに焼き続けてくれている安全地帯で、回答を待つ。こう、もともと魔力の爆発とともに発露した炎の魔法、使いこなし方が技巧的になってきた気がするよ我が兄。
「志摩、今から呼びかけ開始するそうだ。因みに寿命のこと知ってた。これ、永長が聞いてなかっただけっぽい。『なんですか、永長ぼんやりしてたのか何か知りませんが、■■様が仰っていましたよ。お前たちはわたしとの契約中老いることはない。契約を解除した場合、契約した時点以降の従来の寿命分生きることなる。契約解除を行いたくなったらいつでも言ってくれ、って』だって!」
「師匠!志摩の物まね上手いんですけど!」
「しかもてっきり師匠が言ってないものだと…」
「ははは。わたしもてっきり言い忘れたものだと…」
笑っていると見えている世界の光の動きが、早くなり、目の前のダンジョン主キノコから永長への光の触手の伸びが激しくなる。が、その接続が突然切られたように、永長の前ですべてがはじき返されるような光の動きとなり、静止する。
その間、師匠が設置したモニターには永長が悶えて恥ずかしがる映像がまざまざと映っていた。これは、志摩の仕事が良い感じに決まった、ってことだろう。
「あ、落ちてくるわけじゃないんだ。良かった。師匠、今の姿見られる相手は少ない方がいいんですよね」
「まあ、そうだね。確かにこの姿で見られていることは不本意ではあるな。お前たち以外は見たことがない、というか私も自分で初めて見た」
「マジですか」
「しょうもない嘘はつかないよ」
「ですよね」
師匠の人生のありようが特殊すぎて面白すぎる。これはかの魔法使いも夢中になって仕方ない、と思ってしまった。
「じゃあ、目の前のダンジョン主に集中しましょうか!」
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