第243話 浮世音楽堂(7)
私は自分のいままでの狩場で銃をドロップしたことはない。
そもそも兄たちの狩場が違うのかもしれない、というか絶対違うんだろうけどそんなレアそうな銃をポンポンだしたあげくに物理で壊していたとか、信じられなくもあり、ちょっとショックでもあった。
「きっとお前が使っていたら壊れなかったんだろうな、って思うよ。ちなみにこの銃、今が適性レベルだから、そのうちその上のランクを自力で狙えるといいな」
にこにこしながらそう言ってくる、その言葉でわかった。これきっと適性以下のものが大量にでたから遊んで使っていたんだ。だからなんのためらいもなく物理をして遊んでしまう。今回はその内の一つをくれたにすぎない。
レアドロップとはいえ、どの相手からどのぐらいの割合で出る、とわかれば力ある者の蹂躙。しかしこの兄、一体どんなメイン武器を使用しているんだろう。見知らぬ異世界を救って来たらしいから。絶対今、サブとかその下とか遊びとかそんな武器しかつかっていない気がする。
「そういえば、兄さんって『救国の勇者』って呼ばれてたんでしょ?」
「前の世界でね、確かに呼ばれていたけどそれがどうした?」
「世界を救ったんでしょ?なんで『救世』じゃないの?」
前から思っていた素朴な疑問だった。一国の政治に与して救った、というものなのではないかって。
「ああ、それ。前の世界国が70ぐらいあったんだけど、様々な国をわたってそれぞれ助けてたらそう言われるようになった、それだけ。多分ノリの『救国の魔法使い』っていうのも同じノリじゃないか?」
「確かにそうかもしれないね。私も勝手に呼ばれ出したからなあ。因みにあーちゃんの『凍結の魔女』の理由は知らない。なんでなんだろうね?それにしてもかわいい呼び名だよね」
凍結がかわいいか?というのはさておき、この魔法使いは本当に盲目だなあ、と思う。
「じゃあ、そろそろナットに向かおうかな?」
そう言うと、兄が「昼飯食ってけ」と早速の足止めをする。
もちろん食べていきますとも。
◆
「いいな~!!チーズの料理も美味しいが、お前の兄の料理も格別に美味しいからな、うらやましい!」
ナットの我が家に転移してすぐ、目の前にいた魔女さんにそう言われた。
アオくんの通信で、イオくんが朝の作業を終え、昼寝しているとの情報をキャッチ、合流するべく時間を見計らって転移した。そうするとなぜか魔女さんもいた。魔法のコントロールをしてるはずなんだけど割と暇なのかな?とは思ったけど言わないことにした。
「魔女さん、またお世話になります!」
「いやいや、気にするな。しかしまあ、アイツが私を頼ってくるとか笑えてしょうがないわ。しかも弟子に結界魔法まで教えてくるとはほんと面白すぎる」
魔女さんは師匠筋とか気にしない人なのかな?と思っていたのが顔に出ていたらしい。
「チーズ、弟子が他者から魔法を教わることについて不快に思ったりしないか、心配してるだろ。まあ、若い魔法使いとか頑固なやつならそういうのはあるかもしれないが、私の考えとしてはだな。私が教えられる範囲と、アイツが教えられる範囲は別、今育ちざかり覚え盛りのアオとイオの育成にあたってな、筋が悪くない魔法使いの指導はとても良い糧になるからな、わたしとしてもありがたいところなんだよ。しかしほんと、あんなわたしとお前の兄にしか興味のない男が良く弟子たちに魔法を与えたり指導する気になったな。そっちの方が驚くわ」
心なしか満足げな魔女さんを見て、そういう寛容さとは程遠い人だと思ってただけに本当に驚いた。自分はいいけど人は駄目、とか平気で言いそうなイメージがあったから、改めなくては。
「一国を護る結界魔法なんて15歳そこそこの少年に行使させるようなものでもないし、もっと言えば解析させる、そして解析出来るような魔法式でもなかろうに。フフフ…楽しすぎる」
いや、これ、違うな。アオくんとイオくんだから、許容されているんだ。そもそもこの魔女の息のかかった魔法使いは3人(私を除く)、弟子にしようと思うほどの素養の持ち主、だからだ。
「アオ、そしてイオ、あっという間にひも解いてアイツを驚かせてやれ!ところでだ。これから向かう拠点、お前たちを連れて行ったことがないところなのだが、あそこにいる『ハギ』と『フジ』っていうんだが、あいつらは部屋を片付けることが苦手だ。しかも人が片付けるとどこに何があるかわからなくなった!とか宣う、植物の精霊だ」
「師匠、小鳥の使い魔化は志摩と永長で知ってましたが、精霊ってなんですか!」
「アオ、よく考えてみろ。師匠の動きに全く矛盾はない。面白そう、だけで眷属化しそうだろう?」
「気になったか?植物の眷属化。まあ、お前たちも一回会ってくるといい。精霊を眷属にしたら何が起こるかを」
言いざまが不穏なんですけど。そして目が真剣だ。
「あそこの家は、1階に奴らが生息、2階に私の部屋とそれ以外に5部屋ある。2階にはまったく奴らは立ち入らないから全く掃除をしていないからどうなっているかまったくわからん。せっかくの家だというのに40年はいってないからマジで掃除、頼むな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます